物価統制令は所論の如く「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件、(昭和二〇年勅令五四二号)に基き発せられたものである。「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ノ施行ニ関スル件(昭和二〇年勅令五四三号)は、その第一項において、右勅令第五四二号の命令とは「勅令閣令又ハ指令トス」と規定し、その第二項において「前項ノ閣令省令ニ規定スルコトヲ得ル罪」として「三年以下ノ懲役又ハ禁錮、五千円以下ノ罰金云々」と規定しているのである。即ち、右第二項は「閣令及び省令」に規定することのできる罰の種類と限度とを規定しているだけで「勅令」に規定することのできる罰については、何等規定していないのである。従つて所論は右勅令第五四三号の規定を誤解していること明らかである。物価統制令は右勅令第五四三号に違反していないこと明らかである。
物価統制令は昭和二〇年勅令第五四三号に違反しない
物価統制令1条,昭和20年勅令542号(ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件),昭和20年勅令543号(右施行ニ関スル件)
判旨
物価統制令は、委任の根拠となる勅令において罰則の限度が閣令・省令に対してのみ規定されており、勅令自体には限定がないため、憲法上の委任の範囲に反しない。
問題の所在(論点)
物価統制令が、その根拠となる「ポツダム」宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の施行に関する件(昭和20年勅令543号)に規定された罰則の範囲を逸脱し、憲法に違反するか。また、本件行為が正犯として処断されるべきか。
規範
「ポツダム」宣言の受諾に伴い発する命令に関する件(昭和20年勅令542号)に基づき制定される命令のうち、罰則の制限(3年以下の懲役等)が課されているのは閣令および省令に限られる。一方で、これらと同格または上位の形式である「勅令」として制定される命令については、特段の罰則上の制限は課されていない。
重要事実
被告人らは、物価統制令違反の罪で起訴され、第一審および控訴審において正犯として処断された。これに対し被告人側は、(1)物価統制令が根拠となる昭和20年勅令543号の定める罰則の限度を超えており憲法に違反すること、(2)被告人の行為は正犯ではなく従犯(幇助犯)にすぎないことを理由に上告した。
あてはめ
昭和20年勅令543号の規定を検討すると、第1項で命令の種類を「勅令、閣令又は省令」と定め、第2項において「閣令省令に規定することを得る罪」の限度を定めている。しかし、本件物価統制令は「勅令」の形式で発せられたものであり、同第2項の罰則制限は適用されない。したがって、物価統制令が同勅令543号に違反しているとの主張は前提を欠く。また、正犯性の点についても、原判決が挙げた証拠に照らせば、被告人が物価統制令違反の正犯であるとの認定は正当である。
結論
物価統制令は委任の範囲を逸脱しておらず憲法に違反しない。また被告人の行為は正犯と認められるため、上告を棄却する。
実務上の射程
ポツダム緊急勅令に基づく命令の有効性に関する初期の判例である。答案上は、法律による罰則の委任の限界や、委任命令の形式(勅令か閣令・省令か)による効力の差を論じる際の論拠として参照し得る。特に白紙委任の禁止(憲法73条6号但書)との関係で、委任の具体性が問題となる事案での比較対象となる。
事件番号: 昭和26(れ)2485 / 裁判年月日: 昭和27年12月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法施行法の改正により創設された「準新事件」の規定、およびこれに基づく量刑の判断は、憲法11条、14条、31条、22条に違反しない。 第1 事案の概要:刑事訴訟法の改正に伴い、刑訴施行法によって「準新事件」として扱われることになった被告人が、当該施行法の改正が憲法11条(基本的人権)、14条…