判旨
弁護人が自ら控訴趣意書を提出せず、口頭で他の弁護人の控訴趣意書を援用することは、刑事訴訟法上許されない。
問題の所在(論点)
弁護人が自ら控訴趣意書を提出せず、単に口頭で他の弁護人の趣意書を自己の趣意書として援用することが、刑事訴訟法上の適法な控訴趣意の提示として認められるか。
規範
控訴趣意書は、各弁護人が自らの責任において書面で提出すべきものであり、自ら控訴趣意書を提出することなく、公判期日等において口頭で他の弁護人の提出した趣意書を自己の趣意書として援用することは、手続上認められない。
重要事実
被告人の弁護人が、定められた期間内に自ら控訴趣意書を提出せず、口頭によって他の弁護人が提出済みの控訴趣意書の内容を自己の主張として援用した事案である。
あてはめ
本件において弁護人は、自ら書面を提出する義務を怠り、他人の書面を口頭で援用するにとどまっている。刑事訴訟手続における書面主義の観点から、このような形式による主張は適法な趣意書の提出とはいえない。ただし、原判決が当該援用された内容についても実質的に判断を示している場合には、訴訟法上の違法があるとはいえない。
結論
自ら控訴趣意書を提出せず他人のものを口頭で援用することは許されない。本件では原判決に判断遺脱等の違法は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における書面提出義務の厳格性を示す。実務上、複数弁護人がいる場合でも各自が書面を提出するか、共同名義で提出する必要がある。もっとも、内容が実質的に審理されている場合には、手続的瑕疵が直ちに判決に影響を及ぼす違法とはならないことを示唆している。
事件番号: 昭和28(あ)588 / 裁判年月日: 昭和28年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴前の勾留中に行われた供述調書を証拠とすることの適法性、及び起訴後の勾留に違法があったとしてもそれが直ちに判決に影響を及ぼすとはいえないことが示された。 第1 事案の概要:被告人が起訴前および起訴後の勾留期間中に供述を行い、その内容が供述調書として作成された。弁護人は、起訴前の勾留中の供述調書を…
事件番号: 昭和25(あ)589 / 裁判年月日: 昭和26年4月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護届の不提出や主任弁護人の不指定等の手続上の主張は、刑事訴訟法405条所定の適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人は、(1)弁護届に関する法令違反、(2)主任弁護人を指定しなかった違法、(3)事実誤認に基づく擬律錯誤を理由として上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点)…