憲法は裁判の審級制度については同第八一條の場合を除くの外立法を以て適當に定めるとろに委ねているものと解すべきことは當裁判所大法廷の判例とするところである。されば新刑訴が控訴審を覆審とせずに事後審としたからといつて、違憲の問題は起らないし、またそれがために所論の量刑不當や採證違反の點について控訴審を受ける妨げともならない。
公訴審を事後審としたこと憲法との關係
刑訴法第2章控訴,憲法81條
判旨
憲法は裁判の審級制度を立法政策に委ねており、控訴審を事後審とすることは憲法81条、37条1項、82条1項のいずれにも違反しない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法が控訴審を事後審としていることが、憲法が保障する公平な裁判所の迅速な公開裁判(37条1項)や、裁判の公開原則(82条1項)、あるいは最高裁判所の終審権(81条)に関連して違憲となるか。
規範
憲法は裁判の審級制度について、81条の最高裁判所の終審権を除き、立法府が適当に定めるべき事項として委ねている。また、37条1項の保障は裁判所の組織・構成の公正を保障するものであって覆審制を保障するものではなく、82条の公開原則も対審および判決の手続に限定される。
重要事実
被告人等は、刑事訴訟法が控訴審を覆審(事実審)ではなく事後審としたこと、および第一審判決の量刑不当や採証違反について控訴審が十分な審理を行わなかったことが憲法に違反するとして上告した。また、判決に至るまでの全ての訴訟手続が公開法廷で行われるべきであるとも主張した。
あてはめ
憲法上の審級制度は立法裁量に属するため、控訴審を事後審としても違憲ではない。本件原判決は記録を精査し第一審の量刑を相当としており、事後審構造によって量刑不当等の不服申立てが妨げられたとはいえない。また、憲法が公開を要求するのは対審および判決であり、それ以外の訴訟手続を公開法廷で行わなかったとしても、公開原則に反するものではない。
結論
刑事訴訟法が控訴審を事後審としていることは憲法に違反せず、本件控訴審の手続に違憲の点はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟法上の控訴審が、第一審の判決内容を事後的に審査する「事後審」としての性格を持つことの憲法上の正当性を裏付ける判例である。答案上は、審級制度の立法裁量や、憲法37条1項の「公平な裁判所」が必ずしも特定の審級構造を要求するものではないことを論証する際に用いる。
事件番号: 昭和26(あ)3474 / 裁判年月日: 昭和28年2月12日 / 結論: 棄却
当該事案における量刑理由を判示しただけで他の事案に適用すべき法律的見解を含んでいない判決は、刑訴第四〇五条にいわゆる判例といえない。