本件特別抗告は、被告人に對する昭和二四年(を)第一五一〇號窃盜窃被告事件の控訴審たる東京高裁が昭和二四年九月一七日決定した同被告人に關する勾留更新決定に對する異議申立棄却決定につき、同月二〇日抗告人より爲されたものである。しかるに、右被告事件は同年一二月二七日控訴棄却の判決があり確定したものであることが、その後における同事件の確定記録の追送によつて判明した。それ故、本件抗告は、その理由について裁判をする實益がないものといわなければならない。よつて、刑訴第四二六條第一項に則り主文のとおり決定する。
勾留更新決定に對する異議申立棄却決定につき抗告申立後に控訴判決が確定した場合における右特別抗告の理由の有無
刑訴法426條1項,刑訴法433條
判旨
勾留更新決定に対する不服申立てについて、その審理中に被告事件の判決が確定した場合には、当該申立ての理由について裁判をする実益がないため、棄却されるべきである。
問題の所在(論点)
勾留更新決定に対する特別抗告の審理中に、本案である被告事件の判決が確定した場合、当該特別抗告の適法性または理由の有無を判断する必要があるか(裁判上の実益の有無)。
規範
不服申立ての対象となった裁判が、その後の本案判決の確定等によってその効力を失い、または遡及的に解決された場合には、不服申立ての理由について判断を下す「裁判上の実益」が失われる。この場合、裁判所は実体的な理由の当否を判断することなく、申立てを棄却すべきである。
重要事実
被告人に対する窃盗被告事件の控訴審において、東京高等裁判所が勾留更新決定を下した。これに対し、被告人側が異議申立てをしたが棄却されたため、さらに特別抗告を提起した。しかし、当該特別抗告の審理中に、本案である窃盗被告事件について控訴棄却の判決が言い渡され、その後、判決が確定したことが判明した。
事件番号: 昭和29(し)27 / 裁判年月日: 昭和29年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決の確定により未決勾留はその効力を失うため、勾留期間更新決定の当否を争う特別抗告は、不服申立ての利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は窃盗被告事件に関し、名古屋高等裁判所で控訴棄却の有罪判決を受けた。これに対し上告受理の申立てを行ったが受理されず、昭和29年5月14日に原判決が…
あてはめ
本件において、特別抗告の対象は勾留更新決定に対する異議申立棄却決定である。しかし、記録によれば、本案である窃盗被告事件は既に控訴棄却判決が確定している。判決の確定により、未決勾留の状態は終了し、執行段階へと移行することから、過去の勾留更新決定の当否を争う必要性は消失したといえる。したがって、抗告理由について実体的な判断を示す必要はない。
結論
本件特別抗告は、理由について裁判をする実益がないため、刑訴法426条1項により棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における「不服申立ての利益(訴えの利益)」に関する基本的事例である。勾留や保釈などの付随的裁判に対する不服申立て中に本案が確定した場合、原則として争う実益が失われることを示す。答案上は、勾留の適法性を争う論点において、本案確定による終了事由として引用し得る。
事件番号: 平成6(し)88 / 裁判年月日: 平成6年7月8日 / 結論: 棄却
勾留期間更新決定に関する抗告申立ての利益は、右決定による勾留の期間の満了により失われる。
事件番号: 昭和35(し)29 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
勾留更新決定の執行は、その謄本の送達を要件としない。
事件番号: 昭和28(し)24 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の継続には、犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由および罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の存続が必要である。本件においてはこれらの要件が依然として存続していると認められ、勾留の継続を相当とした原決定に憲法違反はない。 第1 事案の概要:被告人は特定の犯罪事実に係る被疑者として勾留されて…
事件番号: 昭和25(し)11 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 棄却
一 所論勾留更新決定書中の更新日の記載が不明瞭であることは所論のとおりであつて、右は「八」の文字と「七」の文字とを重複記載していることは右記載自体から窺われるのであるが、これを二八日と判読するべきか或はこれを二七日と判読すべきかはかかる文字の記載だけから断定することは困難であつて、かかる記載が刑訴規則第五九条に違反する…