勾留期間更新決定に関する抗告申立ての利益は、右決定による勾留の期間の満了により失われる。
勾留期間更新決定による勾留の期間の満了と右決定に関する抗告申立ての利益の消長
刑訴法60条2項,刑訴法426条1項,刑訴法433条
判旨
勾留期間更新決定の効力が期間満了により失われた場合、当該決定に対する不服申立ては、もはやその利益を失い不適法となる。
問題の所在(論点)
勾留期間更新決定に対する不服申立ての継続中に、当該決定が定めた勾留期間が満了した場合、当該不服申立ての利益が失われ不適法となるか。
規範
裁判に対する不服申立てが適法であるためには、当該申立てについて「不服の利益」が存続していることが必要である。勾留期間を更新する旨の決定のような期間を限定した裁判については、その期間が満了し、決定の効力が既に失われた場合には、当該決定を維持・破棄する実益が消滅するため、不服の利益は失われると解すべきである。
重要事実
被告人は、神戸地方裁判所が平成6年5月2日に下した同年5月6日からの勾留期間更新決定に対し、抗告を申し立てた。大阪高等裁判所が抗告を棄却したため、被告人はさらに特別抗告を申し立てた。しかし、最高裁判所に記録が送付された時点(同年6月6日)で、当該更新決定による勾留期間は既に前日(同年6月5日)をもって満了していた。
事件番号: 昭和29(し)27 / 裁判年月日: 昭和29年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決の確定により未決勾留はその効力を失うため、勾留期間更新決定の当否を争う特別抗告は、不服申立ての利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は窃盗被告事件に関し、名古屋高等裁判所で控訴棄却の有罪判決を受けた。これに対し上告受理の申立てを行ったが受理されず、昭和29年5月14日に原判決が…
あてはめ
本件において、被告人が争っているのは平成6年5月6日から開始された勾留期間更新決定である。記録によれば、当該決定に基づく勾留期間は同年6月5日をもって満了している。最高裁判所が本件について審理・判断を行う時点では、既に当該決定の効力は失われているといえる。したがって、被告人が当該決定の取消しを求める実益はもはや存在せず、申立ての利益を欠くものと評価される。
結論
本件特別抗告の申立ては、不服の利益を失ったものとして、不適法であり棄却されるべきである。
実務上の射程
勾留の更新決定だけでなく、勾留決定全般に対する準抗告や抗告についても、勾留が解除されたり期間が満了したりした場合には、同様に不服の利益を欠くものとして処理される。答案上、手続的適法性が問われる場面で「訴えの利益(不服の利益)」の欠如を指摘する際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和24新(つ)12 / 裁判年月日: 昭和25年9月8日 / 結論: 棄却
本件特別抗告は、被告人に對する昭和二四年(を)第一五一〇號窃盜窃被告事件の控訴審たる東京高裁が昭和二四年九月一七日決定した同被告人に關する勾留更新決定に對する異議申立棄却決定につき、同月二〇日抗告人より爲されたものである。しかるに、右被告事件は同年一二月二七日控訴棄却の判決があり確定したものであることが、その後における…
事件番号: 平成24(し)506 / 裁判年月日: 平成24年10月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】観護措置更新決定による収容期間が既に満了している場合、当該決定の効力を争う特別抗告の申立ては、訴えの利益(抗告の利益)を失い不適法となる。 第1 事案の概要:本件は、観護措置更新決定に対する異議申立てを棄却した決定に対し、特別抗告がなされた事案である。記録によれば、当該更新決定に基づく収容期間は平…
事件番号: 昭和28(し)24 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の継続には、犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由および罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の存続が必要である。本件においてはこれらの要件が依然として存続していると認められ、勾留の継続を相当とした原決定に憲法違反はない。 第1 事案の概要:被告人は特定の犯罪事実に係る被疑者として勾留されて…
事件番号: 昭和39(し)86 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留期間の執行満了により失効した勾留更新決定の効力がなお存続することを前提として、さらに重ねてなされた勾留更新決定は違法不当である。 第1 事案の概要:本件では、昭和32年5月17日付でなされた勾留更新決定が存在したが、その勾留期間は執行満了により既に失効していた。しかし、この失効した決定がなお効…