一 所論勾留更新決定書中の更新日の記載が不明瞭であることは所論のとおりであつて、右は「八」の文字と「七」の文字とを重複記載していることは右記載自体から窺われるのであるが、これを二八日と判読するべきか或はこれを二七日と判読すべきかはかかる文字の記載だけから断定することは困難であつて、かかる記載が刑訴規則第五九条に違反するものであることはいうまでもない。しかし本件勾留更新は九月二八日から行わるべきものであることは前説示のとおりであるから、右勾留更新決定書中の更新日は二八日と記載されたものであると解するのを相当とする。従つて、更新日の記載が前示のように明瞭でないからといつて、右更新決定を無効であるとすることはできない。 二 記録を調査するに本件勾留の起算日は昭和二四年四月二二日(公訴の提起があつた日)であるからそのまま勾留されていれば六月二一日が勾留期間満了の日にあたるのであるが被告人は四月二八日まで勾留され同日保釈決定により釈放されたので四月二九日から勾留期間を暦に従つて算出すれば、五月二八日で一ケ月となり、五月の残存日の三日と六月の残存日の二一日を加算して残存期間は一ケ月二四日となるのである。しかるに被告人は八月四日に再び収監されたのであるから八月四日から右残存期間一ケ月二四日を暦に従つて算出すれば九月二七日が右残存期間の満了日にあたることは計算上明白である。 (抗告人は原審で前示残存期間を日数に換算して五四日と計算し残存期間の満了日を九月二六日であると主張するが前記のように暦に従つて計算すべきであるからその主張は理由がない)従つて、本件勾留の更新は九月二八日から行われるべきものであるから原決定の勾留期間の計算は正当である。
一 刑訴規則第五九条に違反する勾留更新決定書中の更新日の不明瞭な記載と右決定の効力 二 勾留期間満了の日の算出方法 三 被告人が保釈出所をした場合の勾留残存期間の算出方法 四 勾留の残存期間満了の日の算出方法
刑訴規則59条,刑訴法60条2項,刑訴法55条2項,民法143条2項
判旨
勾留期間の計算は、日数の換算ではなく暦に従って算出されるべきであり、勾留更新決定における更新日の記載が不明瞭であっても、正当な更新時期から見て合理的に判読可能であれば決定は無効とならない。
問題の所在(論点)
中途で中断された勾留期間の残存期間をいかに算出するか。また、勾留更新決定書における更新日の記載が不明瞭である場合、当該決定は無効となるか。
規範
勾留期間の残存期間および更新日は、単純な日数換算ではなく暦に従って算出する。また、勾留更新決定書における更新日の記載に重複記載などの不備があり、刑訴規則59条に抵触する場合であっても、法の規定に基づく客観的に正当な更新時期と照らし、当該記載を合理的に解釈し得る限り、直ちに当該決定が無効になるものではない。
事件番号: 昭和46(し)31 / 裁判年月日: 昭和46年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留更新の回数制限の除外事由を定める刑事訴訟法60条2項および89条3号の規定は、合理的な理由に基づくものであり、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、勾留更新の回数制限の除外事由を定めた刑事訴訟法60条2項および89条3号の規定に合理的理由がないことを前提として、これらの規定が憲…
重要事実
被告人は昭和24年4月22日に公訴提起(勾留起算日)されたが、同月28日に保釈され釈放された。その後、同年8月4日に再収監された。勾留更新決定書における更新日の記載は「8」と「7」の文字が重複して記載されるなど不明瞭な状態であった。抗告人は、残存期間を日数換算して54日と計算し、更新決定は無効であり憲法31条に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
あてはめ
まず、4月22日起算の勾留は中断がなければ6月21日に満了する。4月29日から再収監前日までの残存期間を暦に従って算出すると、5月28日で1ヶ月となり、これに5月の残り3日と6月の21日を加算した「1ヶ月24日」が残存期間となる。8月4日の再収監からこの残存期間を暦に従い算出すると、満了日は9月27日となる。次に、更新決定書の記載は「28日」か「27日」か判読困難で刑訴規則59条に違反するが、正当な更新は9月28日から行われるべきである。そうであれば、当該記載は「28日」と解するのが相当であり、記載の不明瞭さのみをもって決定を無効とはできない。
結論
勾留期間の計算は適法であり、更新決定書の記載不備も決定を無効とするものではないため、憲法31条違反の主張には理由がなく、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
刑事手続における期間計算(刑法82条、刑訴法55条等)において、暦による計算原則を確認した事例。また、決定書の形式的瑕疵(記載の不明瞭)が実質的な勾留期間の適正さを害さない範囲であれば、合目的的な解釈によって有効性が維持されることを示しており、手続的瑕疵の程度と無効判断の基準として参考になる。
事件番号: 昭和28(し)24 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の継続には、犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由および罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の存続が必要である。本件においてはこれらの要件が依然として存続していると認められ、勾留の継続を相当とした原決定に憲法違反はない。 第1 事案の概要:被告人は特定の犯罪事実に係る被疑者として勾留されて…
事件番号: 昭和24新(つ)12 / 裁判年月日: 昭和25年9月8日 / 結論: 棄却
本件特別抗告は、被告人に對する昭和二四年(を)第一五一〇號窃盜窃被告事件の控訴審たる東京高裁が昭和二四年九月一七日決定した同被告人に關する勾留更新決定に對する異議申立棄却決定につき、同月二〇日抗告人より爲されたものである。しかるに、右被告事件は同年一二月二七日控訴棄却の判決があり確定したものであることが、その後における…
事件番号: 昭和29(し)27 / 裁判年月日: 昭和29年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決の確定により未決勾留はその効力を失うため、勾留期間更新決定の当否を争う特別抗告は、不服申立ての利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は窃盗被告事件に関し、名古屋高等裁判所で控訴棄却の有罪判決を受けた。これに対し上告受理の申立てを行ったが受理されず、昭和29年5月14日に原判決が…
事件番号: 昭和28(し)30 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人に対しては、刑訴六〇条一項一号乃至三号に当る事由が存続し同三四三条の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り勾留期間を更新することができるものと解するを相当とする。されば原決定が、被告人は当該事件の第一審裁判所で懲役一年の言渡を受けて勾留中のものであり、な…