前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人に対しては、刑訴六〇条一項一号乃至三号に当る事由が存続し同三四三条の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り勾留期間を更新することができるものと解するを相当とする。されば原決定が、被告人は当該事件の第一審裁判所で懲役一年の言渡を受けて勾留中のものであり、なお被告人には刑訴六〇条一項三号の事由が存続するものと認め、控訴裁判所のなした第二回の勾留期間更新決を違法でないと判示して異議申立を棄却したことは、もとより適法というべきである。
懲役一年の言渡を受け勾留中の被告人に対してなした控訴裁判所の第二回の勾留更新決定の可否
刑訴法60条1項,刑訴法60条2項,刑訴法343条,刑訴法344条
判旨
禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人については、刑事訴訟法60条2項但書の制限にかかわらず、同法344条に基づき、勾留の理由と必要性が認められる限り勾留期間を更新することができる。
問題の所在(論点)
禁錮以上の刑の宣告を受けた被告人について、刑訴法60条2項但書による勾留期間更新の回数制限(原則1回)が適用されるか。実刑判決後の勾留更新を認める刑訴法344条と、60条2項但書との関係が問題となる。
規範
前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人については、刑訴法60条1項各号の事由(勾留の理由)が存続し、かつ、同法344条(および343条)の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り、同法60条2項但書の更新回数制限にかかわらず、勾留期間を更新することが可能である。
重要事実
被告人は第一審裁判所において懲役1年の実刑判決の言い渡しを受け、勾留中であった。控訴裁判所は、被告人について刑訴法60条1項3号の事由(罪証隠滅の疑い)が依然として存続すると認め、第2回目の勾留期間更新決定を行った。これに対し、被告人側は当該更新決定が刑訴法60条2項但書(更新は1回に限る旨の規定)に違反し憲法31条にも抵触すると主張して異議を申し立てたが、原審で棄却されたため特別抗告に至った。
事件番号: 昭和28(し)31 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新制限規定の適用有無に関する憲法違反の主張は、実質的に単なる法令違反の主張にすぎず、特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人は、禁錮以上の刑に処する判決があった後の勾留につき、刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新の制限規定(※旧法下における更新回数制限等…
あてはめ
本件被告人は第一審で懲役1年の宣告を受けており、刑訴法344条が適用される状況にある。同条は、禁錮以上の刑の宣告があった後は、被告人の逃亡や罪証隠滅を防止し、刑の執行を確保する要請が高まることを踏まえ、勾留の要件を緩和するとともに期間制限を解除する趣旨と解される。本件において被告人には刑訴法60条1項3号所定の事由が存続していると認められる以上、同法344条の趣旨に照らし、2回目以降の更新であっても違法ではない。
結論
控訴裁判所による第2回目の勾留期間更新決定は適法であり、憲法31条違反の主張は理由がないため、特別抗告を棄却する。
実務上の射程
実刑判決後の勾留更新において、刑訴法60条2項但書の「1回に限り」という制限が適用されないことを明示した重要判例である。答案上では、実刑宣告後の勾留更新の適法性を検討する際、344条を根拠に、60条2項但書の適用が排除される旨を簡潔に記述するために用いる。
事件番号: 昭和28(し)24 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の継続には、犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由および罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の存続が必要である。本件においてはこれらの要件が依然として存続していると認められ、勾留の継続を相当とした原決定に憲法違反はない。 第1 事案の概要:被告人は特定の犯罪事実に係る被疑者として勾留されて…
事件番号: 昭和46(し)31 / 裁判年月日: 昭和46年5月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留更新の回数制限の除外事由を定める刑事訴訟法60条2項および89条3号の規定は、合理的な理由に基づくものであり、憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:抗告人は、勾留更新の回数制限の除外事由を定めた刑事訴訟法60条2項および89条3号の規定に合理的理由がないことを前提として、これらの規定が憲…
事件番号: 昭和53(し)79 / 裁判年月日: 昭和53年10月31日 / 結論: 棄却
一 勾留期間延長の裁判が従前の勾留期間経過後に準抗告審で取り消され、その決定が検察官に告知されたときは、検察官は直ちに身柄釈放の手続をとらなければならない。 二 勾留期間延長の裁判が準抗告審で取り消されたのにもかかわらず、検察官において釈放の手続をとることなく身柄を拘束していた違法は、判示の事実関係のもとにおいては、そ…
事件番号: 昭和29(し)27 / 裁判年月日: 昭和29年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決の確定により未決勾留はその効力を失うため、勾留期間更新決定の当否を争う特別抗告は、不服申立ての利益を欠き不適法となる。 第1 事案の概要:申立人は窃盗被告事件に関し、名古屋高等裁判所で控訴棄却の有罪判決を受けた。これに対し上告受理の申立てを行ったが受理されず、昭和29年5月14日に原判決が…