判旨
勾留更新の回数制限の除外事由を定める刑事訴訟法60条2項および89条3号の規定は、合理的な理由に基づくものであり、憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
勾留期間の更新について、一定の重大事犯等につき回数制限の除外を認める刑事訴訟法60条2項(および同法89条3号の準用)の規定が、適正な手続を保障する憲法31条に違反するか。
規範
刑事訴訟法60条2項但書および89条3号(死刑、懲役又は無期禁錮に当たる罪を犯した疑いがある場合等)に基づく勾留更新の回数制限の除外規定は、事案の重大性や罪証隠滅の蓋然性等の諸事情を考慮した合理的な理由に基づくものである。したがって、当該規定は適正手続を定める憲法31条の趣旨に反するものではない。
重要事実
抗告人は、勾留更新の回数制限の除外事由を定めた刑事訴訟法60条2項および89条3号の規定に合理的理由がないことを前提として、これらの規定が憲法31条に違反すると主張して抗告を申し立てた。具体的事実関係(被告人の氏名や公訴事実の細部など)については本決定文からは不明である。
あてはめ
憲法31条は、法定の手続が適正であることを要求しているが、刑事訴訟法60条2項但書が重大な罪を犯した疑いがある場合などに勾留更新の制限を設けないのは、公判審理の長期化や複雑化が予想される重大事案において、身体拘束の継続の必要性を認める立法政策上の合理的な判断といえる。本件においても、原決定が示した通り、当該規定に合理的な理由が存在することは明らかであり、憲法が要求する適正な手続の範囲内にあると解される。
結論
本件各規定には合理的理由が存するため、憲法31条に違反しない。したがって、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(し)24 / 裁判年月日: 昭和28年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留の継続には、犯罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由および罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の存続が必要である。本件においてはこれらの要件が依然として存続していると認められ、勾留の継続を相当とした原決定に憲法違反はない。 第1 事案の概要:被告人は特定の犯罪事実に係る被疑者として勾留されて…
身体拘束の期間制限に関する合憲性判断のリーディングケースである。答案上は、長期勾留が問題となる事案において、刑事訴訟法60条2項等の規定そのものの合憲性を論じる際の根拠として用いることができる。ただし、本決定は規定の合憲性を肯定するものであるため、具体的なあてはめでは、個別的な勾留延長の必要性(不当に長い拘束か否か)に重点を置くべきである。
事件番号: 昭和25(し)11 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 棄却
一 所論勾留更新決定書中の更新日の記載が不明瞭であることは所論のとおりであつて、右は「八」の文字と「七」の文字とを重複記載していることは右記載自体から窺われるのであるが、これを二八日と判読するべきか或はこれを二七日と判読すべきかはかかる文字の記載だけから断定することは困難であつて、かかる記載が刑訴規則第五九条に違反する…
事件番号: 昭和28(し)30 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人に対しては、刑訴六〇条一項一号乃至三号に当る事由が存続し同三四三条の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り勾留期間を更新することができるものと解するを相当とする。されば原決定が、被告人は当該事件の第一審裁判所で懲役一年の言渡を受けて勾留中のものであり、な…
事件番号: 昭和39(し)86 / 裁判年月日: 昭和40年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】勾留期間の執行満了により失効した勾留更新決定の効力がなお存続することを前提として、さらに重ねてなされた勾留更新決定は違法不当である。 第1 事案の概要:本件では、昭和32年5月17日付でなされた勾留更新決定が存在したが、その勾留期間は執行満了により既に失効していた。しかし、この失効した決定がなお効…
事件番号: 昭和42(し)26 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。