一 勾留期間延長の裁判が従前の勾留期間経過後に準抗告審で取り消され、その決定が検察官に告知されたときは、検察官は直ちに身柄釈放の手続をとらなければならない。 二 勾留期間延長の裁判が準抗告審で取り消されたのにもかかわらず、検察官において釈放の手続をとることなく身柄を拘束していた違法は、判示の事実関係のもとにおいては、それが刑訴法六一条の手続をする段階まで継続していたとしても、裁判官が勾留の手続じたいとしては適法な手続を経たうえ、裁判所の審判のために必要であるとしてした勾留の裁判の効力に影響を及ぼさない。
一 勾留期間延長の裁判が従前の勾留期間経過後に準抗告審で取り消された場合と検察官が身柄釈放の手続をとるべき時期 二 違法に身柄を拘束されていたことが勾留の裁判の効力に影響を及ぼさないとされた事例
刑訴法60条,刑訴法61条,刑訴法208条
判旨
検察官が勾留延長請求を却下する裁判の告知を受けた後、直ちに被疑者を釈放せず身柄を拘束し続けたことは違法であるが、その後に裁判官が適法な手続を経て行った勾留の裁判の効力には影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
勾留延長請求を却下する裁判の告知後、検察官が直ちに被疑者を釈放せずに身柄拘束を継続した違法(憲法31条、33条違反等)が、その後になされた公訴提起後の勾留の裁判の効力に影響を及ぼすか。
規範
先行する身柄拘束手続に違法がある場合であっても、後行の勾留手続自体が刑訴法上の適法な手続を履践しており、かつ裁判所の審判のために必要であると認められるときは、先行手続の違法は後行の勾留の裁判の効力に影響を及ぼさない。
重要事実
勾留延長を認める裁判に対し準抗告がなされ、準抗告裁判所は延長請求を却下する裁判をした。検察官は同日午後1時5分にその裁判書の謄本送付を受けたが、直ちに釈放せず、午後2時20分に起訴状を提出。その後、午後9時35分に裁判所に勾留を求め、裁判官は被告人に対し刑訴法61条の告知等の手続を行い、午後11時52分に新たな勾留状を執行した。釈放手続を怠ったまま約10時間にわたり拘束が継続していた事案である。
事件番号: 昭和48(し)49 / 裁判年月日: 昭和48年7月24日 / 結論: 棄却
いわゆる逮捕中求令状起訴により勾留がなされた場合において、これに先だつ逮捕手続の当否は起訴後の勾留の効力に何ら影響を及ぼさない。
あてはめ
検察官が準抗告審の裁判の告知を受けた後に釈放手続をとらず身柄を拘束し続けたことは違法である。しかし、本件の裁判官による勾留は、刑訴法61条所定の手続(被告人に対する権利告知等)を適法に経ており、かつ同法60条所定の勾留の要件の存否を適正に判断した上で行われている。このような適法な手続による身柄の拘束は、裁判所の審判のために必要であると認められ、先行する釈放遅延の違法によってその効力を否定されるべきものではないといえる。
結論
先行する身柄拘束の違法は、適正な手続により行われた公訴提起後の勾留の裁判の効力に影響を及ぼさないため、本件勾留は有効である。
実務上の射程
違法な身柄拘束に続く勾留の効力が争われる場面で、手続の遮断を肯定する根拠として引用できる。先行手続の違法が著しく重大な場合や、令状主義を潜脱する意図がある場合等の限界については本判決からは不明であるが、原則として後行手続の適法履践を重視する立場を示すものである。
事件番号: 昭和42(し)26 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
甲被疑事実による勾留を利用して乙被疑事実につき取り調べた後、いつたん釈放し直ちに乙被疑事実により逮捕勾留した場合において、乙事実について公訴が提起され、その後も勾留理由があるときは、起訴前の段階における右のような勾留およびその勾留中の捜査官の取調べの当否は、起訴後における勾留の効力に影響を及ぼさない。
事件番号: 昭和28(し)30 / 裁判年月日: 昭和28年7月31日 / 結論: 棄却
前審判決により禁錮以上の刑の宣告を受けた勾留中の被告人に対しては、刑訴六〇条一項一号乃至三号に当る事由が存続し同三四三条の趣旨に従い勾留を継続する必要があると認められる限り勾留期間を更新することができるものと解するを相当とする。されば原決定が、被告人は当該事件の第一審裁判所で懲役一年の言渡を受けて勾留中のものであり、な…
事件番号: 昭和28(し)31 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新制限規定の適用有無に関する憲法違反の主張は、実質的に単なる法令違反の主張にすぎず、特別抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人は、禁錮以上の刑に処する判決があった後の勾留につき、刑事訴訟法60条2項但書の勾留更新の制限規定(※旧法下における更新回数制限等…
事件番号: 昭和40(し)79 / 裁判年月日: 昭和41年10月19日 / 結論: 棄却
一 原裁判所は上訴提起後であつても、訴訟記録がまだ上訴裁判所に到達しない間は、被告人を勾留することができる 二 勾留をする裁判所が、すでに被告事件の審理の際、被告事件に関する陳述を聞いている場合には、改めて刑訴法第六一条のいわゆる勾留質問をしなければならないものではない