仮りに勾留が違法であるとしても、その一事だけで直ちにその勾留中に行われた検事の被告人に対する聴取書を目して強制又は拷問による供述書であるということができないことも論を待たない。
勾留処分の違法とその勾留中に行われた被告人に対する検事聴取書の効力
旧刑訴法91条,刑訴応急措置法10条2項,憲法38条2項
判旨
傷害罪(刑法204条)の故意は、他人の身体に対し暴行を加える意思があれば足り、必ずしも傷害を生じさせる認識を要しない。また、被告人の行動経緯から責任能力が認められる場合、特段の精神鑑定を経ずに心神耗弱を否定しても審理不尽とはならない。
問題の所在(論点)
1. 傷害罪(刑法204条)の成立に「傷害の故意」が必要か、それとも「暴行の故意」があれば足りるか。 2. 飲酒酩酊状態にある被告人に対し、精神鑑定等を行わずに心神耗弱を否定することが許されるか。
規範
傷害罪が成立するために必要な犯意(故意)としては、他人の身体に対し暴行を加える意思があれば足りると解すべきである。また、被告人が犯行に至るまでの経緯を合理的に遂行している場合には、特段の鑑定を要さず責任能力を肯定できる。
重要事実
被告人は友人から喧嘩の応援を頼まれてこれを快諾し、直ちに自宅へ戻って匕首(あいくち)を携帯した上で現場に赴き、犯行に及んだ。被告人側は、犯行当時飲酒酩酊により心神耗弱状態にあったこと、および傷害の故意が欠如していたことを主張して上告した。
あてはめ
1. 故意について、他人の身体に暴行を加える意思があれば傷害罪の犯意として十分である。本件では匕首を携帯して現場に赴き犯行に及んでいることから、少なくとも暴行の故意は明白であり、傷害罪の成立を認めるに難くない。 2. 責任能力について、被告人は応援の依頼を快諾し、自宅へ戻り武器を準備して現場へ向かうという一連の事跡を認めることができる。このような行動の計画性や合理性に照らせば、飲酒していたとしても心神耗弱の状態にあったとは認められない。
結論
傷害罪の成立には暴行の故意があれば足りる。また、被告人の犯行前後の行動経緯から責任能力を判断できる場合、精神鑑定を経ずに心神耗弱を否定した原判決に審理不尽の違法はない。
実務上の射程
傷害罪の故意に関するリーディングケースであり、暴行の故意があれば足りるという「暴行による傷害」の法理を明示したもの。答案上は故意の認定において、結果発生の認識まで不要であることを示す際に引用する。また、責任能力の判断において「犯行前後の行動」が重要な判断材料になることを示す際にも有用である。
事件番号: 昭和25(れ)1003 / 裁判年月日: 昭和25年11月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】傷害罪(刑法204条)の成立には、必ずしも傷害の意思(生理的機能障害を生じさせる認識・認容)があることを要せず、暴行の意思をもって暴行を加え傷害の結果を生じさせた場合も含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、被害者に対して暴行を加えたところ、被害者が傷害を負い、その結果として死亡するに至った(傷害…