判旨
傷害罪は結果犯であるが、その成立には暴行を加える故意があれば足り、傷害の結果を生じさせることまでの認識(傷害の故意)は必要とされない。
問題の所在(論点)
刑法204条の傷害罪が成立するために、暴行の故意に加えて、傷害の結果を生じさせることについての認識(故意)までが必要となるか。
規範
傷害罪(刑法204条)の成立には、暴行を加える故意があれば足り、傷害の結果を認識していることは必要ない。
重要事実
本件における具体的な事実は判決文からは不明であるが、被告人側が傷害の結果に対する認識がなかったことを理由に、傷害罪の成立を争って上告したものと推認される。
あてはめ
傷害罪は結果犯であり、暴行によって身体を傷つけた場合に成立する。この点、構成要件的故意としては、基本となる暴行の認識があれば足りる。したがって、行為者が暴行の意図をもって有形力を行使し、その結果として傷害が発生した場合には、傷害の結果に対する認識や認容がなかったとしても、傷害罪の故意として欠けるところはないと解される。
結論
傷害罪の成立には暴行の故意があれば足りるため、傷害の結果の認識がなくても傷害罪が成立する。
実務上の射程
暴行罪(208条)の同時犯の特例(207条)や、暴行の結果として傷害が生じた場合における故意の範囲を論じる際の基礎となる。答案上は、暴行の故意がある場合に傷害罪の構成要件を充足することを短く指摘するために用いる。暴行を手段としない傷害(いわゆる無形的な傷害)の場合の故意については、本判例の射程外である点に注意が必要である。
事件番号: 昭和24(れ)719 / 裁判年月日: 昭和25年6月27日 / 結論: 棄却
一 「甲が乙の襟首を掴んでいたので自分は仲裁するつもりで乙の襟首を掴み乙とともにざわざわ倒れたのである」との供述は、右檢は緊急避難行爲又は過剰緊急避難行爲であると主張したものとはいえない。 二 暴行の意思ありとするには無意識中の行爲でない限り暴行の事實が存すれば充分である。