株主であると主張する者が提起した新株発行不存在確認の訴えは、その者が、株主でなく、当該新株発行につき他に格別の利害関係を有しないときは、訴えの利益を欠き、不適法である。
株主であると主張する者が提起した新株発行不存在確認の訴えが訴えの利益を欠き不適法とされた事例
商法280条ノ15,民訴法225条
判旨
新株発行不存在確認の訴えを提起する者が、前提となる株主の地位を有しないことが確定判決により明らかであり、かつ他に格別の利害関係も有しない場合には、訴えの利益を欠き不適法となる。
問題の所在(論点)
新株発行不存在確認の訴え(旧商法・現会社法に基づき解釈)において、株主としての地位を主張して提訴した者が、別訴の確定判決により株主でないと判断されている場合に、訴えの利益(原告適格に準ずる利益)が認められるか。
規範
新株発行不存在確認の訴えにおける訴えの利益が認められるためには、原告が当該会社の株主であるか、又は当該新株発行について法的紛争を解決する必要がある程度の「格別の利害関係」を有していなければならない。株主であることの確認請求が確定判決により棄却されている場合、当該事由を基礎とする訴えの利益は否定される。
重要事実
被上告人(原告)らは、上告会社(被告)が行った新株発行が存在しないことの確認を求めて提訴した。被上告人らは、亡父から本件株式を譲り受け相続した株主であると主張していたが、別訴の株主権確認請求事件において、被上告人らが本件株式の株主ではないとする判決が既に確定していた。また、被上告人らが本件新株発行について株主以外に格別の利害関係を有する事情も見当たらなかった。
事件番号: 平成5(オ)316 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 破棄自判
新株発行不存在確認の訴えは、会社を被告としてのみ提起することができる。
あてはめ
本件において、被上告人らが本件株式の株主であることを前提に訴えを提起しているが、先行する別訴の確定判決によって、彼らが株主でないことが既に公的に確定している。また、記録上、被上告人らが株主という立場以外に、本件新株発行の存否を確認すべき「格別の利害関係」を有する事情もうかがわれない。したがって、被上告人らが本件訴訟を通じて回復すべき法的利益は存在しないといえる。
結論
被上告人らには本件新株発行が存在しないことの確認を求める訴えの利益がなく、本件訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
会社法上の各種形成の訴えや確認の訴え(会社法828条等)において、原告の適格性や訴えの利益が争点となる場合に参照すべき判例である。特に、前提となる権利関係(株主権の存否)が既判力等により否定されている場合、不適法却下を導く際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和29(オ)797 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役会の招集手続を省略するためには、全取締役(および監査役)の同意が必要であるが、その事実が認められない場合には、招集手続を欠いた取締役会決議は原則として無効となる。本判決は、招集手続省略の同意があったとの主張に対し、事実認定の観点からこれを否定した原審の判断を維持したものである。 第1 事案の…
事件番号: 昭和39(オ)1062 / 裁判年月日: 昭和40年10月8日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、新株引受権を株主以外の者に付与することについての株主総会の特別決議を経ることなく右株主以外の者に引受権を付与して発行されたものであつても、その瑕疵は新株発行無効の原因とならない。
事件番号: 平成5(オ)317 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる。