新株発行不存在確認の訴えは、会社を被告としてのみ提起することができる。
新株発行不存在確認の訴えの被告適格
商法280条ノ15,民訴法45条
判旨
新株発行不存在確認の訴えは、会社法上の明文規定はないが、登記等の外観が存在する場合にこれを画一的に確定させる必要性から認められる。その法的性質は新株発行無効の訴えに準ずるものであり、被告適格は会社に限られる。
問題の所在(論点)
会社法(旧商法)に明文規定のない「新株発行不存在確認の訴え」が認められるか。また、認められるとしても、その被告適格は誰にあるか。
規範
新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号)が期間・原告適格・被告適格を制限し、対世効(同838条)を認めた趣旨は、新株発行に伴う法律関係を早期かつ画一的に確定することにある。新株発行の実体が存在しない「不存在」の場合であっても、登記等の外観が存在する以上、対世効のある判決で確定する必要性は無効の場合と同様である。したがって、新株発行不存在確認の訴えは、無効の訴えに準じて被告を会社に限定した上で認められる。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)が新株を引き受けたことを前提とする新株発行について、その不存在の確認を求めて訴えを提起した。しかし、本件訴えにおいて被告とされたのは、新株を引き受けた株主である上告人個人であり、発行会社を被告としたものではなかった。
事件番号: 平成5(オ)317 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる。
あてはめ
新株発行不存在確認の訴えは、新株発行無効の訴えと同様に法律関係を画一的に確定させる性質を有する。そのため、無効の訴えにおける被告適格の制限(会社法834条2号参照)を類推すべきである。本件において、被上告人は会社ではなく新株引受人である個人を被告として訴えを提起しているが、これは会社を被告としてのみ提起できるという本案の訴訟要件を満たさない。
結論
新株発行不存在確認の訴えは、会社を被告としてのみ提起できる。会社以外の者を被告とした本件訴えは、被告適格を欠き不適法であるため、却下されるべきである。
実務上の射程
新株発行に「重大な瑕疵」があり不存在と評価される場合でも、会社訴訟としての法的性質を重視し、被告適格や判決の効力については無効の訴えの規定が準用・類推される。答案上、会社以外の者を被告とする訴えは不適法と論じる際の根拠となる。なお、出訴期間等の他の要件については本判決は明示していないが、補足意見では可能な限り無効の訴えに準ずべきと示唆されている。
事件番号: 昭和63(オ)958 / 裁判年月日: 平成4年10月29日 / 結論: 破棄自判
株主であると主張する者が提起した新株発行不存在確認の訴えは、その者が、株主でなく、当該新株発行につき他に格別の利害関係を有しないときは、訴えの利益を欠き、不適法である。
事件番号: 昭和46(オ)396 / 裁判年月日: 昭和46年7月16日 / 結論: 棄却
株式会社の代表取締役が新株を発行した場合には、右新株が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な発行価額をもつて発行されたものであつても、その瑕疵は、新株発行無効の原因とはならないものと解すべきである。
事件番号: 平成12(受)469 / 裁判年月日: 平成15年3月27日 / 結論: 破棄差戻
1 新株発行の実体がないのにその外観が存する場合には,新株発行不存在確認の訴えにより,対世効のある判決をもってその不存在の確定を求めることができる。 2 新株発行不存在確認の訴えに出訴期間の制限はない。