1 新株発行の実体がないのにその外観が存する場合には,新株発行不存在確認の訴えにより,対世効のある判決をもってその不存在の確定を求めることができる。 2 新株発行不存在確認の訴えに出訴期間の制限はない。
1 新株発行不存在確認の訴えの認められる場合 2 新株発行不存在確認の訴えの出訴期間
商法109条1項,商法280条ノ15,商法280条ノ16
判旨
新株発行不存在確認の訴えは、新株発行無効の訴えの規定が類推適用されるが、出訴期間の制限については類推適用されない。新株発行の不存在は前提訴訟等でいつでも主張可能であり、出訴期間を制限して効力を早期に確定させる合理的根拠を欠くからである。
問題の所在(論点)
新株発行不存在確認の訴えに対し、新株発行無効の訴えに係る「出訴期間の制限」に関する規定を類推適用することができるか。
規範
新株発行不存在確認の訴えには、その性質に反しない限り新株発行無効の訴えに関する規定を類推適用すべきであるが、出訴期間の制限(会社法828条1項2号参照)に関する規定は類推適用されない。新株発行の不存在は、これを前提とする訴訟においていつでも主張することができ、出訴期間の経過によって存否が終局的に確定するわけではないため、早期確定を目的とする出訴期間制限の合理的根拠がないからである。
重要事実
被上告人(会社)において、平成元年及び2年に新株発行の登記がなされた。株主であった甲は、平成4年、これら新株発行に実体がないとして不存在確認の訴えを提起した。これに対し、原審は、新株発行無効の訴えの規定を準用し、本件訴えは出訴期間(当時は発行から6ヶ月)を経過した不適法なものであるとして却下したため、上告人が受理を申し立てた。
事件番号: 平成5(オ)316 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 破棄自判
新株発行不存在確認の訴えは、会社を被告としてのみ提起することができる。
あてはめ
新株発行無効の訴えは、瑕疵ある発行を無効化する形成的訴えであり、法的安定性の観点から早期確定の必要性が高い。これに対し、不存在確認の訴えは、外観に反して発行の実体がないことを確認する訴えである。不存在の事実は、本案の訴え以外の別訴や抗弁としても期間の制限なく主張し得る事由である。したがって、確認の訴えにおいてのみ出訴期間を制限しても、新株発行の存否を終局的に確定させることにはならず、出訴期間制限の趣旨が妥当しないと評価される。
結論
新株発行不存在確認の訴えには出訴期間の制限はなく、発行から相当期間が経過した後であっても、適法に訴えを提起することができる。
実務上の射程
新株発行だけでなく、設立や合併等の組織再編行為の「不存在」についても同様の理屈(実体がない以上、いつでも主張可能)が適用される。答案上、無効原因と不存在原因を峻別する際、出訴期間制限の有無を分水嶺として論述する根拠となる。
事件番号: 平成5(オ)317 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
新株発行に関する事項について商法二八〇条ノ三ノ二に定める公告又は通知を欠くことは、新株発行差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、新株発行の無効原因となる。