一 指名債権の譲渡を受けた者は、破産宣告前に右譲渡について民法四六七条二項所定の対抗要件を具備しない限り、右債権の譲受をもつて破産管財人に対抗しえない。 二 民法施行法五条四号にいう「確定日附アル証書中ニ私署証書ヲ引用シタルトキ」とは、確定日付ある証書それ自体に当該私署証書の存在とその同一性が明確に認識しうる程度にその作成者、作成日、内容等の全部又は一部が記載されていることをいうと解すべきである。
一 指名債権譲渡の対抗要件と譲渡人の破産 二 民法施行法五条四号にいう「確定日附アル証書中ニ私署証書ヲ引用シタルトキ」の意義
民法467条2項,破産法6条1項,破産法71条,民法施行法5条4号
判旨
指名債権の譲受人は、譲渡人が破産した場合、破産宣告前に確定日付のある対抗要件(民法467条2項)を具備しない限り、破産管財人に債権譲渡を対抗できない。
問題の所在(論点)
指名債権譲渡について破産宣告前に確定日付ある通知等がない場合、譲受人は破産管財人に対抗できるか。また、他の確定日付ある証書への言及や、郵便局による受領証の発行は、民法施行法5条4号・5号の「確定日付」に該当するか。
規範
1. 指名債権譲渡の対抗要件(民法467条2項)における「第三者」には、譲渡人の破産管財人が含まれる。したがって、破産宣告前に対抗要件を具備しなければならない。 2. 民法施行法5条4号の「確定日付ある証書中に私署証書を引用したるとき」とは、証書自体に私署証書の作成者、作成日、内容等の全部又は一部が、その存在と同一性を明確に認識しうる程度に記載されていることをいう。 3. 同条5号の「官庁又は公署において私署証書にある事項を記入しこれに日付を記載したるとき」とは、官庁等が私署証書それ自体に受付等の事項を記入し日付を記載することを指し、別個の文書(書留郵便物受領証等)に記載があっても足りない。
重要事実
債権譲受人(上告人)は、譲渡人(D社)との間で将来債権を含む譲渡契約を締結し、停止条件成就により昭和55年10月4日に本件各売掛債権を取得した。同日、D社は簡易書留郵便で債務者らに譲渡通知を発送し、同月6日までに到達した。しかし、D社は同月15日に破産宣告を受けた。本件通知書には確定日付の押印等はなく、上告人は(1)破産管財人からの通知に譲渡の事実が引用されていること、(2)郵便局が作成した書留郵便物受領証に宛先等が記載されていることを理由に、確定日付があるものと主張した。
あてはめ
1. 破産管財人は、破産債権者の共同利益のために破産財団を管理する立場にあり、債権譲渡の「第三者」に該当する。本件では、破産宣告前までに確定日付のある通知等が具備されていない以上、上告人は破産管財人に対抗できない。 2. 破産管財人作成の内容証明郵便は、譲渡の事実に言及したにすぎず、債権額や債務者の具体的記載を欠くため、同一性を明確に認識しうる引用(施行法5条4号)とはいえない。 3. 書留郵便物受領証は通知書とは別個の証書であり、通知書それ自体に官署の記入・押印がない以上、施行法5条5号の確定日付があるとは認められない。
結論
指名債権の譲受人は、破産宣告前に対抗要件を具備していないため、その譲渡を破産管財人に対抗することはできず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
破産管財人に対する対抗要件具備の必要性を明示した基本判例である。また、民法施行法上の「確定日付」の意義を厳格に解釈しており、実務上、債権譲渡通知は内容証明郵便(確定日付あり)で行うべきことを再確認させる射程を持つ。答案上は、破産管財人の第三者性と、対抗要件具備の判断基準として引用する。
事件番号: 平成16(受)1271 / 裁判年月日: 平成17年2月22日 / 結論: 棄却
動産売買の先取特権者は,物上代位の目的債権が譲渡され,第三者に対する対抗要件が備えられた後においては,目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することはできない。