株式会社の代表取締役であつた甲が持病の悪化により療養に専念するため、その有していた右一会社の株式を取締役乙に譲渡し、乙と代表取締役の地位を交替し、その後乙が、経営陣の一新を図るため臨時株主総会を招集し、右株主総会の決議により、甲を取締役から解任したときは、右解任につき商法二五七条一項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえない。
商法二五七条一項但書にいう「正当ノ事由」がないとはいえないとされた事例
商法257条1項但書
判旨
代表取締役が持病の悪化により業務を退いて療養に専念するため、後任者に株式を譲渡し代表権を交代した際、経営陣の一新を図る目的で行われた解任には、会社法上の「正当な理由」がある。
問題の所在(論点)
取締役が病気療養のために代表権を譲渡・退任し、後任者が経営刷新を目的として行った解任において、会社法339条2項(旧商法257条1項但書)にいう「正当な理由」が認められるか。
規範
取締役の解任における「正当な理由」(会社法339条2項、旧商法257条1項但書)とは、職務執行上の適格性の欠如や、職務遂行に対する著しい障害、あるいは経営体制の刷新が必要と認められる客観的かつ合理的な事情をいう。
重要事実
被上告会社の代表取締役であった上告人は、持病の悪化により業務を退き療養に専念するため、保有する全株式を後任の取締役Dに譲渡し、代表取締役を交代した。その後、Dは経営陣の一新を図るため、臨時株主総会を招集し、その決議によって上告人を取締役から解任した。
事件番号: 昭和41(オ)868 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
株主である取締役は、当該取締役の解任に関する株主総会の決議については、商法第二三九条第五項にいう特別の利害関係を有する者にあたらない。
あてはめ
上告人は持病の悪化により自ら療養に専念することを希望し、全株式を譲渡して代表権を交代している。これは上告人が取締役としての職務を継続的に遂行することが困難であることを示唆し、職務遂行に対する著しい障害があるといえる。また、後任のDによる経営陣の一新は、上告人の引退に伴う合理的な体制整備の一環と解される。したがって、会社の経営上の必要性に基づき、職務遂行が困難となった上告人を解任することには、客観的な合理性があるといえる。
結論
本件解任には正当な理由があるため、上告人の会社に対する損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
病気による職務遂行不能が明らかな場合や、事業承継等に伴う経営権の譲渡・合意に近い形での退任プロセスにおいて、残存する取締役の地位を解消する際の「正当な理由」の認定において有用な射程を持つ。
事件番号: 昭和50(オ)157 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
取締役の解任を目的とする臨時総会の招集は、少数株主による招集請求に基づくときでも、商法二七一条一項にいう会社の常務に属さない。
事件番号: 昭和44(オ)1112 / 裁判年月日: 昭和45年4月2日 / 結論: 棄却
一、役員選任の株主総会決議取消の訴の係属中、その決議に基づいて選任された取締役ら役員がすべて任期満了により退任し、その後の株主総会の決議によつて取締役ら役員が新たに選任されたときは、特別の事情のないかぎり、右決議取消の訴は、訴の利益を欠くに至るものと解すべきである。 二、前項の場合であつても、右株主総会決議取消の訴が当…
事件番号: 平成27(受)1431 / 裁判年月日: 平成28年3月4日 / 結論: 棄却
ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和34(オ)250 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
一 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でも、その第三者は、当該訴訟の当事者となりうる適格を有しないかぎり、民訴第七五条の規定により、共同訴訟人として当該訴訟に参加することができない。 二 株主総会決議取消訴訟において被告となりうる者は、当該株式会社に限られる。