昭和四一年法律第八三号による改正前の商法二〇五条一項に定める方法によらない記名株式の譲渡は、無効である。
昭和四一年法律第八三号による改正前の商法二〇五条一項に定める方法によらない記名株式の譲渡の効力
商法(昭和41年法律第83号による改正前のもの)205条1項
判旨
記名株式の譲渡方法を定めた規定は譲渡方法を限定した趣旨であり、同規定に定める方法(裏書等)によらない記名株式の譲渡は無効である。
問題の所在(論点)
旧商法205条1項(現行会社法128条に関連する議論)が定める記名株式の譲渡方法(裏書または譲渡証書の交付)は効力要件であり、これによらない譲渡は無効となるか。
規範
記名株式の譲渡は、単なる合意と株券の交付のみでは足りず、法律が定める譲渡方法(株券への裏書、または株券及び株主の署名ある譲渡証書の交付)によらなければならない。法律がこれらの方法を規定している趣旨は、譲渡方法をこれらに限定した法意であると解されるため、規定に定められた方法によらない譲渡は無効となる。
重要事実
本件は、昭和41年改正前の商法が適用される事案である。原審(大阪高裁)は、記名株式について譲渡の合意および株券の交付があれば譲渡移転することができると判断した。これに対し、上告人が当該譲渡方法の適法性を争って上告したものである。
あてはめ
旧商法205条1項は、株式譲渡の方法として「裏書」または「署名ある譲渡証書の交付」を明定している。原審は譲渡の合意と株券交付のみで譲渡が成立すると判断したが、これは同条の限定的な趣旨を無視するものである。記名株式の円滑かつ確実な取引を保障する法の趣旨に照らせば、法定された厳格な形式を備えない譲渡は、当事者間においても効力を生じないと解するのが相当である。
結論
記名株式の譲渡は、法定の譲渡方法(裏書または譲渡証書の交付)によらなければ無効である。したがって、合意と株券交付のみで譲渡を認めた原判決には法令解釈の誤りがあり、破棄を免れない。
実務上の射程
本判決は旧商法下の判断であるが、株式譲渡の方式が「効力要件」であることを明示した点で重要である。現行会社法128条1項下においても、株券発行会社における株式譲渡は株券の交付が効力要件とされており、交付を欠く譲渡は当事者間でも無効となるという基本原則の理解において、本判決の法理は現在も射程を有する。
事件番号: 昭和57(オ)529 / 裁判年月日: 昭和59年5月29日 / 結論: 棄却
株主は、額面株式と無額面株式との間の転換を請求するためには、株券を会社に提出することを要する。