株主は、額面株式と無額面株式との間の転換を請求するためには、株券を会社に提出することを要する。
額面株式と無額面株式との間の転換の請求と株券の提出
商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)213条1項,商法213条2項
判旨
額面株式と無額面株式の相互の転換請求において、株主は会社に対し株券を提出することを要する。転換請求後に定款で転換を禁止する旨の定めが置かれた場合、それ以前の不適法な請求に基づき転換を請求することはできない。
問題の所在(論点)
旧商法213条1項に基づく株式の転換請求において、株券の提出は有効要件か。また、適法な転換請求がなされる前に転換を禁止する定款変更がなされた場合、その後の転換請求は認められるか。
規範
株主が額面株式又は無額面株式への転換請求(旧商法213条1項)を行うためには、会社に対し株券を提出することを要する。その趣旨は、転換請求が株券の併合を前提とする措置であることに鑑み、旧株券の回収と新株券の交付という引換えの確実を期す点にある。したがって、株券の提出を欠く転換請求は効力を生じない。
重要事実
被上告会社は、定款により額面株式と無額面株式の双方を発行していた。株主である上告人は、所有する額面株式158株を無額面株式に転換するよう請求したが、その際、会社に対して株券の提出を行わなかった。その後、被上告会社は定款を変更し、転換請求を禁止する旨の規定を設けた。上告人は、本訴において株券の提出と引換えに転換を請求した。
あてはめ
上告人は、昭和53年9月5日の請求時に株券を提出しておらず、旧商法213条1項の転換請求として効力を生じない。また、本訴において「株券との引換え」による転換を請求しているが、既に昭和53年9月29日の臨時株主総会により定款が変更され、転換請求が禁止されている。適法な転換請求がなされる前に転換禁止の定款変更が効力を生じている以上、本訴における請求も認められない。
結論
上告人の転換請求は、当初の請求時に株券の提出がなく無効であり、かつ本訴提起時には定款変更により転換請求権自体が消滅しているため、認められない。
実務上の射程
会社法上の株券発行会社における各種権利行使(株式併合等)の際、株券の提示・提出が要件となるか否かの解釈において、制度の趣旨(引換えの確実性)から導く論証として参考になる。また、定款変更による請求権の遮断の可否についても示唆を与える。
事件番号: 昭和57(オ)1383 / 裁判年月日: 昭和60年3月7日 / 結論: 棄却
定款を変更して株式譲渡制限の定めを設けるとの決議があつた場合において、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)三五〇条一項の株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた者は、右期間の経過後であつても、会社に対し、旧株券を呈示し、右期間経過前に株式を譲り受けたことを証明して、名義書換を請求することができる。