定款を変更して株式譲渡制限の定めを設けるとの決議があつた場合において、商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)三五〇条一項の株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた者は、右期間の経過後であつても、会社に対し、旧株券を呈示し、右期間経過前に株式を譲り受けたことを証明して、名義書換を請求することができる。
商法(昭和五六年法律第七四号による改正前のもの)三五〇条一項の株券提出期間の経過前に株式を譲り受けた者が右期間経過後にする名義書換請求
商法206条1項,商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)350条1項
判旨
譲渡制限を設ける定款変更により旧株券が無効となった後でも、期間満了前に株式を譲り受けた株主は、旧株券を呈示し譲受を証明することで名義書換を請求できる。
問題の所在(論点)
譲渡制限を設ける定款変更に伴う株券提出期間の経過により旧株券が無効となった後、期間満了前に株式を取得していた未失念株主(名義書換未了の譲受人)は、会社に対して名義書換を請求できるか。
規範
1. 譲渡制限の定款変更に伴う株券提出期間が経過した後は、旧株券は株券としては無効となる。2. しかし、期間内に旧株券を提出しなかった株主も株主たる地位を失うものではない。3. したがって、期間満了前(定款変更の効力発生前)に旧株券の交付を受けて株式を取得した者は、期間経過後であっても、旧株券を呈示し、期間経過前に当該株券の交付を受けて株式を譲り受けたことを証明すれば、会社に対し名義書換を請求できる。
重要事実
株式会社が設立後、定款を変更して株式譲渡に取締役会の承認を要する旨の定めを設けた。会社は旧株券の回収と新株券発行のため、旧商法350条1項に基づき株券提出期間を定め、期間内に提出されない株券は無効となる旨の公告等を行った。譲受人は、この株券提出期間が経過する前(定款変更の効力発生前)に、旧株券の交付を受けて株式を譲り受けていたが、名義書換を受けないまま提出期間が経過した。その後、譲受人は会社に対して名義書換を請求した。
あてはめ
まず、株券提出制度は新株券への差し替えを目的とするものであり、株主の地位自体を奪うものではない。本件譲受人は、株券提出期間満了前(定款変更の効力発生前)に旧株券の交付を受けており、有効に株主の地位を取得している。会社は、請求者が株主名簿に記載されていないことのみを理由に名義書換を拒否することはできない。したがって、所持する旧株券が証券としては無効となった後であっても、当該株主は旧株券を「証拠資料」として呈示し、期間満了前に正当に譲渡を受けた事実を証明することで、会社に対し名義書換を求める権利を有すると解される。
結論
株券提出期間経過後であっても、期間満了前に株式を取得した者は、旧株券を呈示して譲受の事実を証明すれば、名義書換を請求できる。
実務上の射程
会社法219条(株券提出手続)に関連する論点として重要。株券が無効となった後も、株主の権利(共益権・自益権)や名義書換請求権が当然に消滅するわけではないことを示す。答案では「株券提出期間の徒過と株主の地位」が問題となる場面で、実質的な権利保護の観点から本判例の規範を引用すべきである。
事件番号: 昭和57(オ)529 / 裁判年月日: 昭和59年5月29日 / 結論: 棄却
株主は、額面株式と無額面株式との間の転換を請求するためには、株券を会社に提出することを要する。
事件番号: 昭和36(オ)392 / 裁判年月日: 昭和38年10月1日 / 結論: 棄却
譲渡人の捺印のみで記名を欠く裏書により記名株式の譲渡をうけた者が、記名を補充せずに会社に対し株主名簿の名義書換請求しても、会社はこれに応ずる義務がないと解すべきである。