商法第二〇四条第二項の規定は、会社に対する関係を別とすれば、白紙委任状付株式申込証拠金領収証により株券発行前の株式に対する権利の善意取得を認める商慣習法ないし商慣習の存在を許さないものではない。
白紙委任状付株式申込証拠金領収証により株式発行前の株式に対する権利の善意取得を認める商慣習法等の効力。
商法104条2項,商法229条
判旨
株券発行前の株式について、払込金領収証に白紙委任状を添付して流通している場合、これを善意かつ無過失で取得した者は、会社に対する関係を除き、その株式の権利を取得するという商慣習法ないし商慣習が存在する。
問題の所在(論点)
株券発行前になされた株式の譲渡制限(会社法128条2項参照)がある場合において、会社に対する関係を別として、第三者が当該株式を善意取得することを認める商慣習法ないし商慣習が認められるか。
規範
株券発行前の株式譲渡につき、会社に対する関係では商法204条2項(現行会社法128条2項)により効力を生じないとしても、譲渡当事者間および第三者に対する関係においては、払込金領収証と白紙委任状の交付を伴う取引により、善意かつ重大な過失なくして取得した者に権利取得を認める商慣習法ないし商慣習が成立し得る。
重要事実
上告人らの株式について、株券が発行される前の段階で、株式払込金領収証(申込金領収証)に名義書換用の白紙委任状を添付した形態で転々流通していた。被上告人は、これらの書類を備えた株式を、善意かつ重大な過失なく取得した。これに対し、会社に対する関係で効力を生じない株券発行前の譲渡において、善意取得のような権利取得を認める商慣習の存否が争われた。
あてはめ
実態として、株券発行前の株式であっても、払込金領収証と白紙委任状を伴う形で市場を転々流通している実態がある。商法204条2項(現行128条2項)は会社に対する関係を規律する規定であるから、同規定が存在することのみを理由に、会社以外の第三者との関係で善意取得の効力を認める商慣習の存在を否定することはできない。本件では、証拠により当該譲渡態様における善意無重過失の取得者に権利を認める商慣習が認められる。
結論
株券発行前の株式であっても、所定の商慣習が存在する場合には、会社に対する関係を別として、善意かつ無過失の取得者はその権利を取得する。
実務上の射程
株券発行前譲渡の効力制限が「会社に対する対抗要件」ではなく「効力発生要件」とされる現行法下でも、当事者間の債権的効力や特定の慣習に基づく権利移動の構成において参照される。ただし、現行会社法128条2項の文言との整合性から、実務上は「会社以外の第三者に対する関係」での限定的な法理として扱うべきである。
事件番号: 昭和34(オ)407 / 裁判年月日: 昭和37年6月1日 / 結論: 棄却
商法の一部を改正する法律施行法(昭和二六年法律第二一〇号)第一一条但書の規定は、会社が新法施行後に名義書換の請求を受けた場合に、その譲渡が新法執行前か後か会社にとつて不明な場合において、会社に免責を得させるために設けられたものであつて、善意取得に関する商法第二二九条の適用を認めたものではない。
事件番号: 昭和27(オ)237 / 裁判年月日: 昭和29年6月22日 / 結論: 棄却
株金払込領収証に添付された白紙委任状が偽造であるときは、譲受人がたとい善意無過失であつても、改正前の商法第二二九条第一項又は第五一九条の準用がない。