株金払込領収証に添付された白紙委任状が偽造であるときは、譲受人がたとい善意無過失であつても、改正前の商法第二二九条第一項又は第五一九条の準用がない。
偽造白紙委任状づき株金払込領収証の善意取得
旧商法229条1項,商法519条
判旨
株金払込領収証に添付された白紙委任状が偽造である場合、たとえ譲受人が善意無過失であっても、旧商法下の規定を準用して質権を有効に取得することはできない。
問題の所在(論点)
株金払込領収証に添付された白紙委任状が偽造であった場合、その交付を受けた譲受人は、善意無過失であれば善意取得(旧商法229条1項、519条の準用)により有効に質権を取得できるか。
規範
株金払込領収証の譲受人が有効に質権を取得するためには、添付された白紙委任状が真正なものであることを要する。白紙委任状が偽造である場合には、譲受人が善意無過失であっても、有価証券の善意取得に関する規定(旧商法229条1項、519条)を準用して保護されることはない。
重要事実
証券会社Dは、被上告人等名義の偽造の白紙委任状を本件各株金払込領収証に添えて外Eに交付した。Eは、自らの上告人に対する債務を担保する目的で、当該領収証と偽造の白紙委任状を上告人に交付した。上告人は、自身が善意無過失であれば質権を有効に取得できると主張して争った。
事件番号: 昭和34(オ)407 / 裁判年月日: 昭和37年6月1日 / 結論: 棄却
商法の一部を改正する法律施行法(昭和二六年法律第二一〇号)第一一条但書の規定は、会社が新法施行後に名義書換の請求を受けた場合に、その譲渡が新法執行前か後か会社にとつて不明な場合において、会社に免責を得させるために設けられたものであつて、善意取得に関する商法第二二九条の適用を認めたものではない。
あてはめ
本件において、株金払込領収証に添付された白紙委任状は、被上告人等の名義を無断で使用した偽造のものであった。このような偽造文書が介在する場合、領収証自体の法律上の性質を検討するまでもなく、権利移転の有効な基礎を欠く。また、有価証券の流通性を保護する善意取得の規定は、文書自体が偽造である場合には適用・準用されないと解される。したがって、上告人が善意無過失であったとしても、質権取得は認められない。
結論
白紙委任状が偽造である以上、譲受人が善意無過失であっても質権を有効に取得することはできず、上告人の主張は認められない。
実務上の射程
記名株券の裏書や白紙委任状が偽造された場合における、有価証券類似の証書への善意取得規定の準用の限界を示す判例である。答案上は、権利外観理論や善意取得の要件として、外観の存在(真正な文書の存在)が前提となることを説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1318 / 裁判年月日: 昭和31年4月27日 / 結論: 棄却
一 白紙委任状を添付してする記名株式の譲渡は、商法第二〇五条第一項の譲渡を証する書面の交付によつてなす記名株式の譲渡に該当する。 二 悪意または重大な過失なくして記名株式を取得した者は、これに添付された譲渡を証する書面が偽造である場合にも、なお、商法第二二九条の保護をうけるものと解すべきである。