商法の一部を改正する法律施行法(昭和二六年法律第二一〇号)第一一条但書の規定は、会社が新法施行後に名義書換の請求を受けた場合に、その譲渡が新法執行前か後か会社にとつて不明な場合において、会社に免責を得させるために設けられたものであつて、善意取得に関する商法第二二九条の適用を認めたものではない。
商法の一部を改正する法律施行法(昭和二六年法律第二一〇号)第一一条但書の法意
商法の一部を改正する法律施行法(昭和26年法律210号)11条,商法229条
判旨
株券発行前の株式譲渡について、譲受人が善意無過失であっても株式の取得は認められない。また、商法施行法11条但書は会社への免責規定であり、善意取得(商法229条)を認めるものではない。
問題の所在(論点)
株券発行前の株式譲受において、譲受人が善意無過失である場合に株式の取得が認められるか。また、商法施行法11条但書により商法229条(善意取得)の適用が認められるか。
規範
株券発行前の株式の譲渡は、当事者間の合意によって効力を生じるが、会社に対してはその対抗要件を備えない限り効力を主張できない。また、株券が発行されていない段階における株式の譲受については、善意取得(商法229条)の規定を適用、あるいは類推適用する余地はなく、無権利者からの譲受は善意無過失であっても保護されない。
重要事実
上告人の夫Dは、訴外Eに対し、株式払込金領収書を「見せ株」として利用させる目的で寄託した。上告人は、昭和26年7月の商法改正前に、この領収書3通を譲り受けたが、添付されていた白紙委任状は偽造されたものであった。上告人は、自身が善意無過失で領収書を取得したとして、株券発行前の株式取得の有効性を主張した。
事件番号: 昭和27(オ)237 / 裁判年月日: 昭和29年6月22日 / 結論: 棄却
株金払込領収証に添付された白紙委任状が偽造であるときは、譲受人がたとい善意無過失であつても、改正前の商法第二二九条第一項又は第五一九条の準用がない。
あてはめ
上告人が譲り受けたのは、株券発行前の株式を表彰する払込金領収書である。しかし、添付の白紙委任状が偽造である以上、譲渡人は無権利者といえる。判決は、株券発行前の株式については善意取得の法理が及ばないとする従前の判例を維持した。また、商法施行法11条但書は、譲渡時期の不明な名義書換請求に対し会社に免責を与える規定に過ぎず、善意取得を認める商法229条の適用を基礎付けるものではないと判断した。
結論
上告人が善意無過失であったとしても、株券発行前の株式を取得することはできず、上告人の主張は排斥される。
実務上の射程
株券発行前の株式譲渡の限界を示す。現行会社法下でも、株券発行前にされた譲渡は会社に対して効力を生じない(128条2項)ため、権利の外観を信頼した保護(善意取得)を否定する本判決の趣旨は、株券不発行原則下での譲渡の効力を考える上での基礎となる。
事件番号: 昭和50(オ)438 / 裁判年月日: 昭和50年11月14日 / 結論: 棄却
株式申込受付票により株券発行前の株式に対する権利の善意取得を認める商慣習法ないし商慣習を肯定する余地はない。