株主総会の決議に基き一定時の株主に新株引受権が付与されたとき、親株について右一定時より以前に譲渡行為がなされていても、その日時までに譲渡人の失念により名義書替手続がなされていなければ、譲渡人は新株引受権を取得するものではない。 株主総会の決議が一定時現在の株主に対し新株引受権を与えている場合の株主とは、右一定時において株主名簿に登録されていて会社に対抗できる株主をいう。
親株の譲渡行為がなされたにかかわらず名義書替手続の失念された場合と新株引受権。 株主総会の決議により一定時現在の株主に対し新株引受権を付与する場合の株主の意義。
商法(昭和25年法律167号による削除前)348条1項4号,商法(昭和25年法律167号による改正前)205条,商法(昭和25年法律167号による改正前)206条
判旨
株主割当てによる新株引受権は、株主総会決議により基準日時点の株主名簿上の株主に限定して付与することが可能であり、名義書替を失念した株式譲受人に当該権利が当然に随伴することはない。
問題の所在(論点)
株主総会決議により基準日時点の名簿上の株主に新株引受権を付与すると定めた場合、名義書替を失念した株式譲受人は、親株の譲渡に伴い当然に新株引受権を取得できるか。また、名義人が取得した新株は譲受人に対する不当利得となるか。
規範
株主割当てによる新株引受権は、定款に別段の定めがない限り、その付与対象者や内容を株主総会の決議により決定できる。具体的新株引受権を特定の基準日における株主名簿上の登録株主に限定することは、会社の処置として適法であり、譲渡された親株の権利に当然に随伴して移転するものではない。
重要事実
上告人の先代Eは、証券会社を通じてD社の株式を取得し、株券の交付を受けたが、新株発行の基準日までに名義書替手続を失念した。D社は株主総会決議に基づき、基準日時点の株主に対し新株引受権を付与した。名義人であった被上告人らは、基準日において株主名簿に登録されていたため、自ら新株を引き受け、払い込みを完了して株式を取得した。これに対し、Eの承継人である上告人らが、新株引受権は親株の譲渡に随伴すべきである等として、被上告人らに対し不当利得返還等を求めた。
あてはめ
D社の株主総会決議は、基準日時点の株主に対し新株引受権を与える旨を定めていた。ここでの「株主」とは、会社が法的立場において株主として遇することができる者、すなわち株主名簿に登録された者を指す。新株引受権は株主の固有権ではなく、総会決議によって発生する具体的権利である。会社が権利の帰属者を名簿上の株主に限定することは適法である以上、親株の譲渡があったとしても、当然に新株引受権が随伴して移転したとは解されない。したがって、被上告人らは自己の権利として正当に新株を取得しており、法律上の原因を欠く不当利得や事務管理の成立も認められない。
結論
名義書替を失念した株式譲受人は、基準日時点の名簿上の株主に付与された新株引受権を取得できず、名義人が新株を取得したことは不当利得には当たらない。
実務上の射程
基準日による権利者の確定(基準日制度)の効力を肯定する。名義書替失念による失権リスクは譲受人が負うべきであり、名義人による新株取得を正当とする実務上重要な判断である。不当利得の成否についても、名義人の利得が法律上の原因に基づくことを明示している。
事件番号: 昭和39(オ)48 / 裁判年月日: 昭和41年7月28日 / 結論: 棄却
株式譲受人から株式会社に対し株式名義の書換の請求をした場合において、会社の過失により書換が行なわれなかつたときは、会社は、株式名義の書換のないことを理由として、株式の譲渡を否認することができない。