譲渡人の捺印のみで記名を欠く裏書により記名株式の譲渡をうけた者が、記名を補充せずに会社に対し株主名簿の名義書換請求しても、会社はこれに応ずる義務がないと解すべきである。
捺印のみの裏書により記名株式の譲渡と会社の株式名簿書換義務の存否
商法205条,商法206条,手形法13条
判旨
株券の裏書に譲渡人の署名または記名がなく捺印のみがある場合、譲受人が記名を補充しない限り、会社は株式所持人としての形式的資格の欠如を理由に名義書換請求を拒絶できる。
問題の所在(論点)
裏書欄に前株主の捺印のみがある株券の交付を受けた譲受人が、譲渡人の記名を補充せずに名義書換を請求した場合、会社は形式的資格の欠如を理由にこれを拒むことができるか。
規範
記名株式の裏書譲渡には譲渡人の署名または記名捺印を要し(旧商法205条2項、現行法上は株券交付のみで足りるが、本判決当時の法理)、これを欠く裏書は原則無効である。もっとも、記名は本人以外でも行い得るため、捺印のみある株券の交付を受けた譲受人は記名補充権を取得し、自ら記名を補充すれば形式的資格を取得する。会社による記名補充は任意であり、会社が補充に応じない限り、不完全な裏書による譲受人の名義書換請求を拒むことができる。
重要事実
上告人は、前株主の捺印のみがあり、譲渡人の署名または記名が欠けている株券の交付を受けた。上告人は、譲渡人の記名を自ら補充することなく、会社に対して株主名簿の名義書換を請求した。これに対し、会社側は裏書の不備を理由に名義書換を拒否したため、その適法性が争われた。
あてはめ
本件株券には譲渡人の捺印はあるが署名・記名がないため、形式上、適法な裏書の方式を欠いている。譲受人は記名補充権を有しており、自ら補充することで形式的資格を具備できるが、補充がない状態では依然として形式的資格を欠く。譲受人が会社に対し記名補充を依頼したと解する余地はあるが、会社には法律上これに応じる義務はない。したがって、会社が任意に補充を行わない以上、上告人は適法の所持人としての形式的資格を証明できていないといえる。
結論
会社は、譲受人に株式所持人たる形式的資格が欠けていることを理由に、名義書換請求を拒むことができる。
実務上の射程
現行会社法下では株券発行会社における株式譲渡は株券の交付のみで効力を生じ(128条1項)、裏書は名義書換の対抗要件や資格授与的効力の要件ではない。しかし、株券の不備(署名・捺印の欠缺等)がある場合に、会社が形式的資格の欠如を理由に書換を拒絶できるという「形式的資格と会社の義務」に関する法理は、白地補充権の議論など他の有価証券法理においても参考となる。
事件番号: 昭和31(オ)238 / 裁判年月日: 昭和35年4月22日 / 結論: 棄却
商法第二〇四条第二項の規定は、会社に対する関係を別とすれば、白紙委任状付株式申込証拠金領収証により株券発行前の株式に対する権利の善意取得を認める商慣習法ないし商慣習の存在を許さないものではない。
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。