飼主が散歩に連れて行こうとして檻から出した畜犬が公道に飛び出し、進行中の原動機付自転車に接触して転倒させ、運転者を負傷させるなど原判示のような事情があるときは、飼主に畜犬保管上の過失がある。
畜犬の飼主に保管上の過失を認めた事例
民法718条1項
判旨
動物の占有者が負うべき損害賠償責任に関し、判示の事実関係に基づき、民法718条による責任の成立を認めるとともに、過失相殺の割合(占有者6割、被害者4割)を肯定した。
問題の所在(論点)
民法718条に基づく動物占有者の責任の有無、および同条に基づく賠償額の算定における過失相殺の妥当性。
規範
民法718条1項により、動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する義務を負うが、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその保管をしたときは、この限りではない。また、被害者に過失があった場合は、同法722条2項を準用し過失相殺を行うことができる。
重要事実
占有者(上告人)が管理する動物によって、被害者(被上告人)が損害を被った事案。原審は、上告人の動物の管理状況および被上告人の行動等、諸般の事情を考慮して、上告人に民法718条の責任を認めつつ、上告人の過失を6割、被上告人の過失を4割と認定した。上告人はこの判断を不服として上告した。
あてはめ
判決文からは詳細な具体的事実は不明であるが、最高裁は原審の認定した事実関係を肯認した。その上で、当該事実関係のもとにおいて、占有者に相当の注意義務の尽くされていない落ち度があったとして民法718条の責任を認めた原審の判断を正当とした。さらに、過失相殺の割合についても、双方の落ち度を比較衡量した原審の判断に違法はないとした。
結論
上告人に民法718条による損害賠償責任が認められ、過失相殺(上告人6:被上告人4)を行った原審の判断は維持される。
実務上の射程
動物占有者の責任(民法718条)が問われる事案において、具体的な過失相殺の割合を算定する際の裁量的な判断を最高裁が是認した事例として位置づけられる。実務上は、保管状況の不備と被害者の不注意の程度を比較衡量する際の目安となる。
事件番号: 昭和32(オ)727 / 裁判年月日: 昭和36年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動物の占有者は、飼育する動物に咬癖があるなどの事情がある場合、保管上の注意を尽くしたと認められない限り、当該動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。 第1 事案の概要:上告人(被告)が飼育する犬が、被上告人(原告)を咬んで負傷させた。この犬には以前から咬癖があったことが認定されている。上告人は…