動物の占有者は、自己に代つて動物を保管する者を選任してこれに保管をさせた場合において、「動物ノ種類及ビ性質ニ従ヒ相当ノ注意ヲ以テ」その保管者を選任・監督したときは、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を免れるものと解するのが相当である。
動物の占有者が保管者を選任して動物の保管をさせた場合における民法第七一八条の責任。
民法718条
判旨
民法718条1項の動物占有者が、自己に代わって動物を保管する者(同条2項の保管者)を選任した場合には、占有者がその選任および監督につき相当の注意を払ったことを立証すれば、損害賠償責任を免れる。
問題の所在(論点)
民法718条1項の動物占有者が、同条2項の保管者を選任して動物を管理させていた場合、占有者が保管者の選任・監督について相当の注意を払ったことをもって免責を主張することができるか。
規範
民法718条1項および2項を比較対照すると、動物の占有者と保管者が併存する場合、両者の責任は重複して発生し得る。もっとも、占有者が自己に代わって動物を保管する者を選任した場合には、占有者は動物の種類および性質に従い相当の注意をもって当該保管者を選任・監督したことを挙証すれば、同条1項但書により免責されると解するのが相当である。
重要事実
上告人(占有者)は、被用者であるD(運送人・保管者)に対し、本件馬の運送および保管を委ねていた。Dの過失により本件事故が発生し、損害が生じたため、上告人の動物占有者としての責任が問われた。上告人は、Dの選任および事業の監督について相当の注意を尽くしたとして免責を主張したが、原審はDに過失がある以上、上告人は当然に責任を免れないとして、上告人の選任監督上の過失の有無を判断せずに責任を認めた。
あてはめ
本件において、Dは上告人に代わって本件馬を保管する者(保管者)に該当する。占有者である上告人は、保管者であるDの選任・監督について過失がなかったことを主張している。それゆえ、裁判所は、上告人がDの選任・監督において「動物の種類および性質に従い相当の注意」を尽くしたか否かを審理すべきである。原審がこの点を確認せずに直ちに上告人の責任を認めたことは、民法718条の解釈を誤ったものといえる。
結論
占有者は、代わって保管する者の選任・監督につき相当の注意を払ったことを立証すれば免責される。原判決を破棄し、選任・監督の過失の有無を審理させるため差し戻す。
実務上の射程
本判決は、動物占有者と保管者が分かれているケースにおいて、占有者の免責要件を明確にしたものである。答案上では、718条1項但書の「相当の注意」の内容として、保管者を選任している場合にはその保管者の「選任・監督上の注意」が判断対象となることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)727 / 裁判年月日: 昭和36年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動物の占有者は、飼育する動物に咬癖があるなどの事情がある場合、保管上の注意を尽くしたと認められない限り、当該動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。 第1 事案の概要:上告人(被告)が飼育する犬が、被上告人(原告)を咬んで負傷させた。この犬には以前から咬癖があったことが認定されている。上告人は…