認可された更生計画において、更生債権についてその一部の免除及びその残額につき弁済期の猶予が定められ、特定の債権者の届け出た複数の更生債権について一括して債権額、免除額及び分割弁済額が表示されていても、右更生計画は、特段の事情のない限り、債務の要素を変更する更改にあたらず、右届出にかかる複数の更生債権は消滅しない。
認可された更生計画において債務の一部免除及び弁済期の猶予が定められ複数の更生債権について一括して免除額等が表示されている場合と更改の成否
会社更生法211条1項,会社更生法212条1項,会社更生法242条1項,民法513条1項
判旨
更生計画により更生債権が一部免除・期限猶予されても、従前の債権と同一性を有しない新たな債権が発生するものではなく、複数債権の合計額が表示されても当然には一個の債権へと更改されない。
問題の所在(論点)
会社更生法に基づく更生計画の認可(現行法204条1項参照)によって、更生債権の内容が変更された場合、従前の債権は消滅し、新たな債権へと更改されるのか。特に複数の債権が合算して記載された場合の債権の同一性が問題となる。
規範
更生計画により更生債権の一部免除や期限猶予が定められた場合であっても、従前の更生債権が消滅して新たに権利が発生するものではない。また、更生計画において複数の更生債権の合計額やそれに対する弁済額が示されている場合であっても、特段の事情のない限り、複数の債権を消滅させて同一性のない一個の債権を発生させる(債務の要素を変更する更改)ものとは解されない。
重要事実
更生手続において、債権者Dが届け出た複数の手形債権に関し、認可された更生計画の一般更生債権者に関する条項の中で、これら手形金額の合計額が表示され、当該合計額に対応する免除額及び分割弁済額が示されていた。原審は、この記載をもって債務の要素を変更する更改にあたり、従前の複数の手形債権は消滅して一個の新たな債権が発生したと判断した。
あてはめ
更生計画による権利の変更は、更生債権の内容を確定的に変更し、一部免除や期限猶予等の効果をもたらすものであるが、債権そのものの同一性を失わせるものではない。本件において、更生計画に複数の手形金額の合計額が記載され、それに基づき弁済額が算出されていたとしても、それは事務上の便宜等にすぎず、直ちに各手形債権を消滅させて別個の一個の債権を創設する合意(更改)があったとは認められない。したがって、特段の事情がない限り、従前の複数の債権としての性質は維持される。
結論
更生計画の定めによって当然に債務の更改が生じるわけではなく、従前の債権との同一性は維持される。したがって、単に合計額が表示されていることを理由に一個の債権が発生したとした原審の判断には、更生計画の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
倒産法(会社更生・民事再生)における権利変更の性質が「更改」ではないことを明示した点に意義がある。答案上は、更生計画認可後の債権の性質が問題となる場面(例えば、担保権の随伴性や保証人に対する影響等)において、債権の同一性が維持される根拠として本法理を活用すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)237 / 裁判年月日: 昭和40年3月19日 / 結論: 棄却
公正証書には担保物件として土地および建物を供した旨の記載があるのに、その作成を嘱託した委任状には単に建物を供した旨の記載があるにすぎない場合にも、真実該公正証書記載どおりに作成すべき権限を有していたのに土地の記載を脱落したものであることが明らかなときは、右瑕疵は該公正証書の無効をきたす重大なものとは解されない。
事件番号: 昭和35(オ)535 / 裁判年月日: 昭和36年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】停止条件付代物弁済契約の基本となった債権の一部が利息制限法の超過利息に該当し無効であっても、有効な元本の範囲で契約を締結しなかったであろうと認められる特段の事情がない限り、当該契約は有効に存続する。 第1 事案の概要:債権者と債務者との間で、20万円の債権を基本とする不動産の停止条件付代物弁済契約…