不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合の債務消滅の効力は、原則として、単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によつて生ずるものと解すべきである。
不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合における債務消滅の要件。
民法482条
判旨
不動産所有権の譲渡をもって代物弁済をする場合、債務消滅の効力は、原則として単に所有権移転の意思表示をするだけでは足りず、所有権移転登記手続の完了によって生じる。
問題の所在(論点)
不動産を代物弁済の目的物とする場合、どの時点をもって本来の債務が消滅するか。単なる合意(意思表示)のみで足りるのか、それとも登記を要するのかが問題となる。
規範
債務者が本来の給付に代えて不動産所有権の譲渡をもって代物弁済(民法482条)をする場合、債務消滅の効力が発生するためには、特段の事情のない限り、単なる所有権移転の意思表示のみでは足りず、対抗要件たる所有権移転登記手続を完了させる必要がある。
重要事実
被上告人(債権者)と上告人(債務者)との間において、上告人が負う金銭債務(65万円の元利金等)の代物弁済として、被上告人が所有する土地を供し、当該債務を消滅させる旨の契約が成立した。原審は、この代物弁済契約が成立したという事実のみをもって直ちに債務の消滅を肯定したが、所有権移転登記手続が完了したか否かについては判断を示さなかった。
事件番号: 昭和35(オ)504 / 裁判年月日: 昭和38年4月2日 / 結論: 棄却
右登記が右仮登記の本登記手続としてなされ、所有権取得の権利の実際に合致し、登記義務者の意思に基づいてなされたものである以上、当該本登記の抹消登記手続を求めることはできない。
あてはめ
代物弁済は要物契約的性質を有するところ、不動産譲渡による代物弁済において債権者が本来の給付に代わる「弁済を受けた」といえるためには、単なる譲渡の合意のみならず、債権者がその所有権を第三者に対抗し得る状態(登記の完了)が必要である。本件において、原判決は代物弁済契約の成立のみを認定して債務の消滅を認めたが、登記手続の完了を確認していない点で、代物弁済による債務消滅の要件に関する解釈を誤っているといえる。
結論
不動産の代物弁済による債務消滅の効力は、原則として所有権移転登記手続の完了時に発生する。したがって、登記の完了を確認せずに債務消滅を認めた原判決は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
不動産の代物弁済がなされた際の債務消滅時期に関するリーディングケースである。答案上は、代物弁済の要物性(または承諾があれば足りるが効力発生には給付を要する点)を論じる際、不動産については「登記」が「給付」の内容であることを明示すべきである。なお、特約がある場合には登記前でも消滅し得るとの解釈もあり得るが、原則論としては本判例を引くべきである。
事件番号: 昭和26(オ)560 / 裁判年月日: 昭和28年11月12日 / 結論: 棄却
一 一抵当権設定契約とともになされた停止条件付代物弁済契約は、特段の事由のないかぎり、代物弁済の予約と解すべきものである。 二 右の場合において、抵当権を実行するか、代物弁済の予約を完結させるかは、債権者の選択に委される。
事件番号: 昭和39(オ)255 / 裁判年月日: 昭和41年12月6日 / 結論: 棄却
代物弁済の予約が成立するためには、代物弁済によつて消滅すべき債権の数額が当初より一定していることを要しないが、少くとも一定しうべき基礎が定められていることを要する。
事件番号: 昭和39(オ)919 / 裁判年月日: 昭和40年3月11日 / 結論: 棄却
不動産を目的とする代物弁済の予約完結の意思表示がなされたときは、これにより、該不動産の所有権移転の効果が生ずるものと解すべきである。