右登記が右仮登記の本登記手続としてなされ、所有権取得の権利の実際に合致し、登記義務者の意思に基づいてなされたものである以上、当該本登記の抹消登記手続を求めることはできない。
株券の消費貸借の代物弁済予約を締結し金銭消費貸借の代物弁済予約による所有権移転請求権保全の仮登記をした場合における右仮登記の本登記の効力。
不動産登記法2条
判旨
登記原因の記載が実際の権利発生原因と異なっていても、当該登記が実体的な権利関係に合致し、かつ当事者の意思に基づきなされたものであれば、その登記は有効であり、抹消を求めることはできない。
問題の所在(論点)
登記上の原因(金銭消費貸借の代物弁済予約)が実際の原因(株券消費貸借の代物弁済予約)と異なる場合において、当該登記の抹消を請求できるか。また、代物弁済予約が公序良俗に反するといえるか。
規範
登記の有効性は、実体上の権利関係との合致および登記手続の意思の有無によって判断される。具体的には、登記上の権利変動の態様(原因)が実態と相違する場合であっても、(1)現在の権利状態が実体的な権利関係に合致しており、かつ(2)当該登記手続が当事者の合意(意思)に基づきなされたものであるならば、その登記は有効と解すべきである。
重要事実
上告人と被上告人の間で株券の消費貸借がなされ、その債務の代物弁済予約に基づき本件建物の所有権が移転した。しかし、登記簿上は「金銭消費貸借の代物弁済予約」を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がなされ、これに基づき本登記が実行されていた。上告人は、登記原因が実際の内容と異なり実態を反映していないとして、登記の抹消を求めた。また、本件代物弁済契約が暴利行為として公序良俗に反し無効であるとも主張した。
事件番号: 昭和38(オ)164 / 裁判年月日: 昭和39年5月26日 / 結論: 棄却
登記義務者の意思に基づかない登記であつても、現在の実体的権利関係に符合するものであるかぎり、右意思に基づかないとして、当該登記の抹消登記請求をすることは理由がない。
あてはめ
まず、本件建物は代物弁済として実際に被上告人に所有権が移転しており、登記は現在の実体的な権利関係に合致している。また、仮登記手続は両当事者の合意により行われており、上告人の意思に基づかないものとはいえない。したがって、原因の記載が事実と異なっても抹消を求めることはできない。次に、公序良俗違反の点について、建物の価格が高額とは断定できず、株式の時価変動も考慮すれば、無知窮迫に乗じた暴利行為とは認められない。ゆえに、契約を無効とする事情は存在しない。
結論
本件登記は有効であり、上告人は被上告人に対しその抹消を求めることができない。また、本件契約は公序良俗に反せず有効であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
登記の「実体的有効要件」に関する基本判例である。答案上は、登記原因の齟齬が問題となる場面で、不動産登記法の公示の原則と実体権利保護の調和の観点から、実体的権利関係との合致を重視する理屈として引用できる。また、暴利行為の判断における時価変動要素の考慮についても示唆を与える。
事件番号: 昭和35(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和36年6月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者の窮迫に乗じ不当な代物弁済契約を締結したといった事情がない限り、予約完結権の行使が公序良俗や信義則に反するものとはいえない。また、利息制限法施行前の合意に基づく遅延損害金を計算の基礎とすることも、直ちに権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人(債務者)は、被上告人(債権者)との間…
事件番号: 昭和35(オ)234 / 裁判年月日: 昭和37年10月5日 / 結論: その他
甲乙丙三棟の建物を所有する債務者が、未登記の甲建物の所有権保存登記をなすべく司法書士に委任したところ、甲建物を主たる建物、乙丙建物を付属建物と表示する登記がなされ、次いで、債権者の手により甲乙丙建物を目的物とする抵当権設定登記が経由されたのに対し、抵当権設定契約の不存在を理由として右抵当権設定登記の抹消登記手続を請求す…
事件番号: 昭和33(オ)992 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代物弁済の予約に基づく所有権移転が、不動産価格と債務額に大きな差がある場合でも、相手方の窮迫等を利用して過当な利益を図る目的がない限り、直ちに公序良俗に反して無効とはならない。 第1 事案の概要:上告人は被上告人から37万円を借り受け、利息制限法に基づく引き直し後の元本債務は38万1100円であっ…
事件番号: 昭和38(オ)1111 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
債務額一三七万円の約四・五倍にあたる六〇九万五千円余の価額を有する土地および建物を目的とする代物弁済契約であつても、相手方の窮迫、軽卒に乗じ不当な利益を獲得する目的でしたものと認められない以上、右代物弁済契約は、民法第九〇条により無効であるとはいえない。