債権の差押、取立命令における被差押債権の表示が「債務者が第三債務者に対して有する昭和四一年一二月三〇日に支払を受くべき、(1)滋賀県長浜市の上水道工事、(2)兵庫県明石市の上水道工事の下請負代金の合計金一五〇万円の内金六〇万円」とあり、右(1)、(2)の工事は別個の契約であつて、報酬を一括して約束したものでもない場合には、右の差押、取立命令は、差押、取立にかかる債権の範囲が特定されていないゆえをもつて無効である。
債権の差押、取立命令がその債権の範囲が特定されていないゆえをもつて無効とされた事例
民訴法594条,民訴法600条
判旨
複数の別個の債権の一部を差し押さえる場合において、各債権ごとの差押金額が特定されていないときは、差押え及び取立命令は無効である。
問題の所在(論点)
民事執行手続において、複数の別個の契約に基づく債権を合算し、その一部を差し押さえる旨の表示がなされた場合に、被差押債権の特定を欠くものとして無効となるか。
規範
債権差押命令及び取立命令が効力を生ずるためには、被差押債権が特定されていることを要する。複数の契約に基づく別個の債権の一部を差し押さえる場合、各債権の範囲及びその充当の順序等が客観的に明確に指定されていなければ、差押えの対象となる債権の範囲が特定されているとはいえず、当該命令は無効となる。
重要事実
上告人は、債務者Dが被上告会社に対して有する請負報酬債権について、額面60万円の債権差押及び取立命令を得た。同命令における被差押債権の表示は、「(1)滋賀県長浜市の工事及び(2)兵庫県明石市の工事の下請負代金の合計金150万円の内金60万円」とされていた。しかし、これら2つの工事は個別の契約に基づくものであり、報酬も一括して支払う約束はなされていなかった。
あてはめ
本件における2つの工事代金債権は、それぞれ別個の契約に基づき発生した独立の債権である。差押命令の表示では、これら合計150万円のうち60万円を差し押さえるとしているが、(1)の債権と(2)の債権のどちらから、あるいはどのような割合で差し押さえるのかが指定されていない。そうすると、第三債務者にとって、どの債権が差し押さえられ、どの債権の支払を拒絶すべきかが客観的に判別できない状態にある。したがって、差押債権の範囲が特定されているとは認められない。
結論
本件差押及び取立命令は、差押債権の特定を欠くため無効である。よって上告は棄却される。
実務上の射程
債権執行の実務において、被差押債権の「特定」は第三債務者の二重払いの危険を防止し、弁済の相手方を明確にするための不可欠の要件である。複数の債権を対象とする場合は、各債権の優先順位や金額の内訳を明示する必要があることを示した射程の長い判例である。
事件番号: 昭和55(オ)435 / 裁判年月日: 昭和58年1月25日 / 結論: 破棄差戻
認可された更生計画において、更生債権についてその一部の免除及びその残額につき弁済期の猶予が定められ、特定の債権者の届け出た複数の更生債権について一括して債権額、免除額及び分割弁済額が表示されていても、右更生計画は、特段の事情のない限り、債務の要素を変更する更改にあたらず、右届出にかかる複数の更生債権は消滅しない。
事件番号: 昭和28(オ)536 / 裁判年月日: 昭和30年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べの申し出において立証事項や証拠方法の表示が不十分な場合は不適法であり、それが唯一の証拠であっても裁判所は証拠調べを行う義務を負わない。 第1 事案の概要:上告人は原審においてある証拠の申し出を行ったが、その際、当該証拠によって何を立証しようとするのかという「立証事項」の明示、および対象とな…