公立高等学校生徒に対する退学処分が、正当な理由のない無断欠席を理由とする家庭謹慎処分中に、同処分の撤回を求めて校内に入り込み、集会を開催し、演説、デモを行うなど、学校内の秩序を乱す行為があつたとして無期停学処分を受けたにもかかわらず、連日登校し、授業中の教師に抗議し、同処分撤回等を要求する同校生徒によるハンストを支援してテントを張り、他の生徒に要求支持の呼びかけを行い、校長室に乱入して大衆団交を要求するなどの行為があつたことを理由とするものであり、他方、学校側では、生徒総会の開催を認め、教頭から経過説明を行い、また予備折衝を行うなど生徒の意向をくむ措置をとり、父兄と連絡をとり生徒の指導説得にあたつたなど判示のような事実関係のもとにおいては、右退学処分は、処分権者たる校長の裁量権の範囲内で行われたものであつて、正当である。
公立高等学校生徒に対する退学処分が正当とされた事例
学校教育法11条,学校教育法施行規則13条
判旨
高等学校の生徒による政治活動を目的とした無断欠席は正当な理由にあたらず、それに基づく懲戒処分は憲法上の表現の自由等を侵害しない。また、教育上の指導・説得を尽くしてもなお校内秩序を乱す行為を継続した生徒に対する無期停学及び退学処分は、校長の裁量権の範囲内として適法である。
問題の所在(論点)
1. 政治活動を目的とした無断欠席に対する懲戒処分が、憲法19条(思想・良心の自由)や21条(表現の自由)に違反し、または学校教育法11条にいう懲戒事由を欠くのではないか。 2. 無期停学および退学処分が校長の裁量権を逸脱・濫用したものではないか。
規範
1. 高等学校の規律権に基づく懲戒処分について、生徒が授業出席の義務に違反して正当な理由なく欠席した場合、学校当局は処分を行うことができる。政治的活動を目的とした無断欠席は「正当な理由」にはあたらない。 2. 懲戒処分の選択は校長の合理的な裁量に委ねられており、教育的見地から説得・指導を尽くした上でも改善が見られず、校内秩序の維持に重大な支障があると認められる場合には、裁量権の逸脱・濫用にはあたらない。
重要事実
公立高校の生徒である上告人が、成田空港建設反対運動等の政治活動に参加するため、約10日間の無断欠席をした。学校側はこれを理由に家庭謹慎処分(第一次処分)を下したが、上告人は処分中も校内に侵入して集会や坐り込み、デモを行い、秩序を乱したとして無期停学処分を受けた。さらに、停学処分中も登校を強行し、ハンストの支援やテント占拠、校長室への乱入を繰り返した。学校側は数回に及ぶ親との話し合いや指導・説得を試みたが、改善が見られなかったため、最終的に退学処分を決定した。
あてはめ
1. 学校教育において生徒は授業出席を要求される立場にあり、その反面として授業時間中に他の行動(政治活動)をする自由を拘束されるのは当然である。本件処分は「政治活動をしたこと自体」ではなく「無断欠席」という客観的事実を理由としており、憲法違反や懲戒事由の欠如はない。 2. 学校側は、上告人の行動に対し校内放送での説明や生徒総会の開催、数回にわたる家庭訪問、全職員による夜間の指導説得など、教育的配慮に基づく多大な努力を尽くしている。これに対し上告人は、指導を無視して校地占拠や校長室乱入等の過激な行為を継続した。このような事実関係に照らせば、本件各処分は報復的措置ではなく、教育的判断に基づく裁量の範囲内といえる。
結論
本件各処分に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
学校における生徒の政治活動の自由と規律権の関係を示す。学習権や教育環境の維持が優先される場面(授業時間等)における活動制限を肯定する根拠となる。また、退学処分の適法性判断において、学校側が尽くすべき「教育的配慮(指導・説得のプロセス)」の具体的内容を検討する際の指標となる。
事件番号: 平成2(行ツ)118 / 裁判年月日: 平成5年3月2日 / 結論: 棄却
気象庁職員が、同庁職員で組織するD労働組合E支部F分会により給与の改善等を目的として勤務時間に約一八分間食い込む職場集会が行われた際、分会長として、これに参加し、主たる役割を果たしたなどの原判示の事実関係の下においては、右違法行為を理由としてされた右職員に対する戒告処分は、裁量権を逸脱、濫用したものとはいえない。 (補…