一 国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四‐七第五項四号、第六項一三号の規定の違背を理由として懲戒処分を行うことは、憲法二一条に違反しない。 二 郵便外務を職務とする一般職の国家公務員が、メーデーの集団示威行進に際し約三〇分間にわたり、「アメリカのベトナム侵略に加担する佐藤内閣打倒」と記載された横断幕を掲げて行進する行為は、特定の内閣に反対する政治的目的を有する文書を掲示したものとして人事院規則一四‐七第五項四号、第六項一三号に該当する。 (二につき反対意見がある。)
一 国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四‐七第五項四号、第六項一三号の規定の違背を理由とする懲戒処分と憲法二一条 二 一般職の国家公務員がメーデーの集団示威行進に内閣打倒等と記載された横断幕を掲げて行進する行為が人事院規則一四‐七第五項四号、第六項一三号に該当するとされた事例
憲法21条,国家公務員法102条1項,人事院規則14−7第5項4号,人事院規則14−7第6項13号
判旨
国家公務員法102条1項及び人事院規則による公務員の政治的行為の制限は、憲法21条に違反しない。機械的労務を提供する非管理職の現業公務員であっても、政権打倒を掲げた横断幕を掲示して行進する行為は禁止される政治的行為に該当し、これに対する戒告処分は懲戒権の濫用にあたらない。
問題の所在(論点)
国家公務員法102条1項及び関連する人事院規則の規定が、非管理職の現業公務員による勤務時間外の政治的表現行為を禁止し、これに懲戒処分を課す限度で憲法21条に違反するか。また、本件戒告処分が懲戒権の濫用にあたるか。
規範
公務員の政治的中立性の確保と、それに対する国民の信頼の維持は憲法上の要請である。したがって、公務員の政治的行為の禁止は、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまる限り憲法に違反しない。これは、職種、職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無を問わず、また労働組合活動の一環として行われた場合であっても同様である。懲戒権の行使については、処分権者の裁量に委ねられており、社会通念に照らして合理性を欠かない限り濫用とはならない。
重要事実
郵便局の集配業務に従事する非管理職の現業公務員である被上告人は、日曜日の勤務時間外に、メーデーの集団示威行進に参加した。その際、被上告人は「佐藤内閣打倒」等と記載された横断幕を掲げ、自ら文言選定に関与するなど指導的役割を果たした。これに対し、任命権者(上告人)は、国家公務員法102条1項及び人事院規則(政治的目的を有する文書の掲示等)に違反するとして、最も軽い懲戒処分である戒告処分を行った。
あてはめ
まず、憲法適合性については猿払事件大法廷判決の趣旨を引用し、公務員の政治的中立性確保の観点から一律の制約も合憲とされる。本件行為について見ると、特定の内閣に反対する政治的目的を有する文書を掲示したものであり、人事院規則の禁止類型に該当する。あてはめにおいて、被上告人が機械的労務に従事する者であることや勤務時間外であったことは、禁止規定の適用を免れさせる事情とはならない。次に懲戒権の濫用について、本件処分は懲戒の中で最も軽い「戒告」であり、他の同種行為者が処分されていないとしても、行為の政治的性格を考慮すれば、社会通念上の合理性を欠くとはいえない。
結論
国家公務員法等の規定及びこれに基づく戒告処分は憲法21条に違反せず、本件処分は懲戒権の濫用にもあたらない。したがって、処分の取消請求は棄却される。
実務上の射程
公務員の政治的行為の制限に関する「猿払事件」の規範を、刑事罰ではなく懲戒処分の事案においても維持・適用した点に意義がある。答案上は、公務員の表現の自由の制約を論じる際、現業職・勤務時間外といった「侵害の小ささ」を示唆する事情があっても、判例は中立性確保の要請を優先して合憲・適法とする立場であることを説明するために用いる。
事件番号: 昭和51(行ツ)105 / 裁判年月日: 昭和52年12月23日 / 結論: 棄却
地方公務員法三七条一項は憲法二八条に違反しない。
事件番号: 昭和57(行ツ)131 / 裁判年月日: 昭和63年12月9日 / 結論: 棄却
地方公営企業労働関係法附則四項により地方公営企業職員以外の単純な労務に雇用される一般職の地方公務員に準用される同法一一条一項は、憲法二八条に違反しない。