実用新案権に基づく損害賠償請求訴訟の上告裁判所において、実用新案登録に係る考案がその登録出願時において新規性を有しないことを理由として右登録を無効とすべき旨の審決の確定したことが自ら言い渡した審決取消請求事件の判決に徴し顕著である場合は、無効審決の確定により実用新案権が初めから存在しなかつたものとみなされることが実用新案法四一条によつて準用される特許法一二五条本文の規定により明らかであり、実用新案権が存在することを前提とする損害賠償請求は、理由がない。
上告裁判所が自らした審決取消請求事件の判決の言渡により実用新案登録の無効審決確定の事実が顕著である場合に実用新案権に基づく損害賠償請求は理由がないとされた事例
実用新案法41条,特許法125条,民訴法403条
判旨
実用新案登録を無効とすべき旨の審決が確定した場合には、特許法125条本文(実用新案法41条で準用)に基づき、当該権利は初めから存在しなかったものとみなされるため、侵害を前提とする損害賠償請求は認められない。
問題の所在(論点)
実用新案登録を無効とする審決が確定した場合において、当該実用新案権に基づく損害賠償請求の可否(実用新案権の遡及的消滅の効力)。
規範
実用新案法41条において準用する特許法125条本文は、「特許を無効にすべき旨の審判の確定したときは、特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす」と規定する。したがって、実用新案登録につき新規性の欠如等を理由として無効審決が確定した場合には、当該実用新案権は遡及的に消滅する。
重要事実
1. 原告(上告人)らは、手芸用糸入れ金属編籠に関する実用新案権及びその独占的通常実施権を有していた。 2. 被告(被上告人)らが同製品を製造販売した行為が権利侵害に当たるとして、原告らは損害賠償を請求した。 3. 本件訴訟の継続中、当該実用新案登録につき、出願時の新規性欠如を理由に登録を無効とする旨の審決が確定したことが顕著な事実として認められた。
事件番号: 昭和51(オ)538 / 裁判年月日: 昭和57年3月30日
【結論(判旨の要点)】実用新案登録を無効とすべき旨の審決が確定した場合には、実用新案法41条で準用する特許法125条本文により、当該実用新案権は初めから存在しなかったものとみなされるため、侵害を理由とする損害賠償請求は認められない。 第1 事案の概要:上告人A(実用新案権者)および上告人B(独占的通常実施権者)は、被上…
あてはめ
本件実用新案登録については、出願時において新規性を有していなかったことを理由に、これを無効とすべき旨の審決が確定している。特許法125条本文(実用新案法41条準用)の規定によれば、無効審決が確定したことで、本件実用新案権は「初めから存在しなかったもの」とみなされる。したがって、権利が存在することを前提とする被告らに対する損害賠償請求は、その前提を欠くこととなる。
結論
本件実用新案権は遡及的に消滅したため、これを前提とする損害賠償請求は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
知的財産法における無効審決の対世的・遡及的効力を確認した基本判例である。答案上は、権利侵害訴訟の最中に無効審決が確定した場面で、権利の不存在を理由に請求を排斥する根拠として条文(実用新案法41条、特許法125条)と共に引用する。なお、本判決は審決確定後の判断であるが、後の「キルビー事件(最判平12.4.11)」により、審決確定前であっても裁判所が独自に権利行使の濫用を認める法理へと発展する点に留意が必要である。
事件番号: 昭和37(オ)560 / 裁判年月日: 昭和38年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当業者が容易に実施できる考案は新規性を欠き、旧実用新案法3条2号に該当するものとして登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は自身の考案について実用新案登録を受けていたが、当該登録実用新案について、旧実用新案法3条2号(公然知られたもの等)に該当するか否かが争われた。原審は、当該考案…
事件番号: 昭和28(オ)512 / 裁判年月日: 昭和30年3月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】実用新案法(旧法)に基づく登録対象となるためには、考案が同法1条にいう「新規ノ型ノ工業的考案」に該当することを要し、新規性を欠く考案については登録を受けることができない。 第1 事案の概要:上告人は、自らの考案について実用新案法に基づく登録を求めた。しかし、原審において、当該考案は同法1条に規定さ…