遺言執行者がある場合に、包括受遺者が遺言の執行として目的不動産の所有権移転登記手続を求める訴の被告としての適格を有する者は、遺言執行者に限られる。
遺言執行者がある場合に包括受遺者が遺贈義務の履行を求める訴の被告適格
民法990条,民法1012条,民法1013条,民訴法45条
判旨
遺言執行者がいる場合、遺贈による不動産の所有権移転登記手続を求める訴えの被告適格は、特定遺贈か包括遺贈かを問わず遺言執行者に独占的に帰属する。
問題の所在(論点)
遺言執行者が存在する場合において、遺贈を原因とする不動産所有権移転登記請求訴訟の被告適格は誰に認められるか。特に特定遺贈と包括遺贈で結論に差異があるかが問題となる。
規範
遺言執行者が存在する場合、遺言の執行として行われる目的不動産の所有権移転登記手続を求める訴えにおいて、被告としての適格を有する者は遺言執行者に限られる。
重要事実
遺言者が不動産を遺贈する旨の遺言を残して死亡し、遺言執行者が選任されていた。受遺者が当該遺贈に基づき、目的不動産の所有権移転登記手続を求めて提訴したが、その際の被告適格の帰属が問題となった。なお、当該遺贈が特定遺贈であったか包括遺贈であったかは、判決文からは不明である。
事件番号: 昭和42(オ)1023 / 裁判年月日: 昭和43年5月31日 / 結論: 破棄差戻
遺言執行者がある場合においては、特定不動産の受遺者から遺言の執行として目的不動産の所有権移転登記手続を求める訴の被告適格を有する者は、遺言執行者にかぎられ、相続人はその適格を有しない。
あてはめ
遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な処分権限を独占する。不動産の遺贈の履行としての登記手続は、遺言の執行そのものである。したがって、受遺者が特定遺贈を受けた者であるか、包括受遺者であるかを問わず、その執行に関する訴訟については、遺言執行者のみが被告適格を有する。相続人は、遺言執行者の存在により当該財産の処分権限を失っているため、被告適格を有しないと解される。
結論
遺言執行者がいる場合、遺贈による登記請求訴訟の被告適格は遺言執行者にのみ認められ、相続人等は被告適格を有しない。
実務上の射程
民法1012条1項(執行権限)および1015条(代理関係)を根拠とする。答案上は、被告適格の有無(訴えの適法性)が問題となる場面で、本判例を引用して遺言執行者を被告とすべきことを論じる。特定遺贈と包括遺贈を区別せずに適用できる点が実務上重要である。
事件番号: 平成10(オ)1499 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: その他
特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、右所有権移転登記の抹消登記手続のほか、甲への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和51(オ)17 / 裁判年月日: 昭和51年7月19日 / 結論: その他
相続人が遺言の執行としてされた遺贈による所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴については、遺言執行者がある場合でも、受遺者を被告とすべきである。
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和35(オ)1321 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続財産の特別代理人によって選任された訴訟代理人は、当該相続財産の訴訟代理人であり復代理人ではない。また、特別代理人の代理権は、相続財産管理人の選任等により当然に消滅するのではなく、裁判所の解任によって消滅する。 第1 事案の概要:上告人は亡Dの相続財産に対して本訴を提起した。一審判決では当事者表…