民訴法56条
判旨
相続財産の特別代理人によって選任された訴訟代理人は、当該相続財産の訴訟代理人であり復代理人ではない。また、特別代理人の代理権は、相続財産管理人の選任等により当然に消滅するのではなく、裁判所の解任によって消滅する。
問題の所在(論点)
1. 相続財産の特別代理人が選任した訴訟代理人の法的性質(復代理人該当性)。 2. 相続財産管理人の選任等による特別代理人の代理権消滅の有無。
規範
1. 相続財産の特別代理人が選任した訴訟代理人は、相続財産自身の訴訟代理人としての地位を有し、復代理人には当たらない。 2. 相続財産の特別代理人の代理権は、別途相続財産の管理人が選任されたり、当該管理人が訴訟を受継したりしたことによって当然に消滅するものではなく、裁判所による解任を待って消滅する。
重要事実
上告人は亡Dの相続財産に対して本訴を提起した。一審判決では当事者表示に不備があったが、原審で「亡Dの相続財産」と適法に訂正された。本件では、亡Dの相続財産の特別代理人(杉浦)が選任され、当該特別代理人が訴訟代理人(伊藤)を選任した。上告人は、当該訴訟代理人が「復代理人」に過ぎないこと、および相続財産管理人の選任等により特別代理人の権限が当然に消滅していることを理由として、訴訟代理権の欠缺や訴訟手続の法令違背を主張して上告した。
あてはめ
1. 相続財産の特別代理人は相続財産を代表して訴訟を遂行する権限を有しており、その者が選任した代理人は相続財産本人の代理人と解される。したがって、復代理人であることを前提とする上告人の主張は前提を欠く。 2. 特別代理人は裁判所の手続により選任される公的な地位であり、その権限の消滅についても法的安定性の観点から明確な手続を要する。相続財産管理人の選任という客観的事実があったとしても、裁判所による解任がなされない限り、特別代理人の代理権は存続すると解すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)648 / 裁判年月日: 昭和32年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表見代理の成立要件である「正当の理由」の有無は、事実認定の問題であり、原審が証拠に基づいてこれを否定した判断は違法ではない。 第1 事案の概要:上告人の代理人Dが、訴外Eに被上告人を代理して本件土地を売却する権限があるものと信じて取引を行った。上告人は、Dがそのように信じたことについて「正当の理由…
結論
本件訴訟代理人の選任に欠缺はなく、特別代理人の代理権も消滅していないため、上告を棄却する。
実務上の射程
相続財産を当事者とする訴訟において、特別代理人の権限消滅時期を「解任時」と明確にした点に実務上の意義がある。答案上は、代理権の存続や訴訟代理人の権限を論じる際の論拠として利用できる。
事件番号: 昭和35(オ)499 / 裁判年月日: 昭和36年4月7日 / 結論: 棄却
訴訟代理人は、攻撃又は防禦の方法として、相手方に対し契約を解除する権限をも有するものと解すべきである。
事件番号: 昭和33(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和35年7月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産売買の売主が所有権移転登記手続の代理権を授与した後、受任者が売主の死亡後に代理人として登記を申請した場合、その登記手続は有効である。 第1 事案の概要:上告人の被相続人Dは、本件不動産を被上告人に売却し、その所有権移転登記手続の代理権を姉であるEに授与した。その後、Dが死亡したが、受任者Eは…
事件番号: 昭和31(オ)614 / 裁判年月日: 昭和33年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不在者が行方不明になる際、特定の者に自己の財産管理や子女の養育等、留守中の管理一切を委託し実印を預けた場合、受託者は不在者の氏名・押印をもって訴訟代理人を選任する等の特別の権限を授与されたものと解される。 第1 事案の概要:再審被告(被上告人)は、昭和25年7月頃に行方不明となった。その際、養母D…
事件番号: 昭和32(オ)917 / 裁判年月日: 昭和35年3月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理権のない者によって行われた土地の譲渡について、裁判所は代理権の欠如を理由に直ちに請求を排斥でき、譲渡の意思表示の有無を判断したり追認の有無を釈明したりする義務はない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Dが被上告人の代理人として本件各土地を上告人に譲渡したと主張した。しかし、Dが管理権や代理権を…