訴訟代理人は、攻撃又は防禦の方法として、相手方に対し契約を解除する権限をも有するものと解すべきである。
訴訟代理人の権限の範囲。
民訴法81条
判旨
訴訟代理人は、特段の委任がない場合であっても、当該事件の攻撃防御方法として必要な範囲において、相手方に対し契約解除等の実体法上の意思表示をなす権限を有する。
問題の所在(論点)
訴訟代理人は、特別の委任がない場合であっても、攻撃防御方法の提出に付随して、契約解除等の実体法上の意思表示を代理して行う権限(実体法上の代理権)を有するか。
規範
訴訟代理人は、民事訴訟法上の特別の委任を要する事項を除き、当事者から訴訟委任を受けることで、当該事件について一切の攻撃又は防御の方法を提出する権限を有する。したがって、契約の解除が攻撃防御方法として必要なものである場合には、訴訟代理人は、特別の委任がなくても、相手方に対し契約を解除する実体法上の権限をも有するものと解すべきである。
重要事実
被上告人らの第一審訴訟代理人Eは、第一審の口頭弁論期日において、本件契約を解除する旨の意思表示を行った。被上告人らの防御は、当該契約解除がなされたことを前提としなければ達成できない性質のものであった。一方、上告人の第一審訴訟代理人Fは、当該口頭弁論期日に出頭していた。上告人側は、訴訟代理人には実体法上の解除権を行使する権限はないとして、解除の効力を争った。
事件番号: 昭和32(オ)495 / 裁判年月日: 昭和35年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約の解除を主張するにあたり、解除の意思表示が単なる事情の説明に留まらず、予備的な主張としてなされたといえるためには、文言上その趣旨が明らかでなければならない。また、催告を欠く解除の意思表示は、有効な解除としての効力を認められない。 第1 事案の概要:不動産の売買契約において、売主(上告人)が…
あてはめ
本件において、訴訟代理人Eによる契約解除の意思表示は、被上告人らの防御を達成するために不可欠な攻撃防御方法の提出としてなされている。そうである以上、Eは被上告人らに代わって契約解除を行う代理権を有していたといえる。また、当該意思表示は口頭弁論期日において相手方(上告人)の訴訟代理人Fが立ち会う中でなされており、相手方に即時到達したものと認められる。したがって、当該解除の意思表示は有効に成立していると評価される。
結論
訴訟代理人は、攻撃防御方法として必要な範囲で実体法上の意思表示をなす権限を有し、本件契約解除の意思表示は有効である。
実務上の射程
訴訟上の形成権行使(解除、相殺、取消等)が、私法上の効果を発生させるための代理権を伴うかという論点で活用できる。訴訟代理権の範囲(民訴法55条)を根拠に、訴訟遂行の便宜の観点から実体法上の代理権を肯定する有力な根拠となる判例である。
事件番号: 昭和35(オ)1321 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続財産の特別代理人によって選任された訴訟代理人は、当該相続財産の訴訟代理人であり復代理人ではない。また、特別代理人の代理権は、相続財産管理人の選任等により当然に消滅するのではなく、裁判所の解任によって消滅する。 第1 事案の概要:上告人は亡Dの相続財産に対して本訴を提起した。一審判決では当事者表…
事件番号: 昭和30(オ)995 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
一 知事の許可を停止条件として締結された農地の売買契約は、無効ではない 二 土地の買主が約定の履行期後、売主に対し、しばしばその履行を求め、かつ売主において右土地の所有権移転登記手続をすれば、何時でも支払えるよう残代金の準備をしていたときは、民法第五五七条にいわゆる「契約の履行に著手」したものと認めるのが相当である
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…