農地法五条の知事の許可を条件とする所有権移転登記請求訴訟において、その土地が現在市街化区域に属し、当事者の主張によつてもその現況が宅地化していることを疑わせる場合には、裁判所は、釈明権を行使して右土地の現況が宅地であるかどうかなどを明らかにさせるべきである。
農地法五条の知事の許可を条件とする所有権移転登記請求訴訟において土地の現況が宅地であるかどうかにつき釈明権を行使すべきであるとされた事例
民訴法127条
判旨
農地の売買契約後、当該土地が市街化区域に属し、その現況が宅地となった場合には、特段の事情のない限り、知事に対する届出なしに売買契約の効力が生じる。裁判所は、釈明権を行使して土地の現況を確認し、届出の要否や契約の効力を判断すべきである。
問題の所在(論点)
農地法5条の転用目的の売買において、契約後に土地が市街化区域内となり、かつ現況が宅地化した場合に、同条所定の届出等の手続なしに契約の効力が認められるか。また、裁判所はそのような事実関係について釈明権を行使すべきか。
規範
農地の転用を目的とする売買において、農地法所定の制限(知事の許可または届出)が必要とされるのは、農地としての適正な利用を確保する趣旨による。したがって、売買契約締結後に当該土地が市街化区域に指定され、かつ、その現況が既に宅地化している場合には、もはや農地としての保護の必要性が失われている。この場合、特段の事情のない限り、農地法上の届出等の手続を待たずして、当該売買契約は当然に効力を生ずるものと解するのが相当である。
重要事実
上告人は被上告人から農地(本件土地)を買い受け、農地法5条所定の届出手続及び受理を条件とする所有権移転登記手続を求めた。本件土地は契約後に市街化区域に属することとなり、上告人は既に土地上に家屋を建築していた。被上告人も本件土地は宅地化していると主張していたが、原審は転用に関する合意が認められないとして上告人の請求を棄却した。
事件番号: 昭和42(オ)429 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
農地を目的とする売買契約締結後に、売主が目的物上に土盛りをし、その上に建物が建築され、そのため農地が恒久的に宅地となつた等買主の責に帰すべからざる事情により農地でなくなつた場合には、右売買契約は、知事の許可なし完全に効力を生ずると解するのが相当である。
あてはめ
本件土地は既に市街化区域に属しており、買主である上告人が家屋を建築している事実に争いがない。また、売主である被上告人自身も土地が宅地化している旨を主張しており、請求の前提も現況が宅地であることに置かれていると解される。このような状況下では、土地の現況が宅地であるか否かが契約の効力発生を左右する決定的な事実となる。それにもかかわらず、原審がこの点を確認せず、転用の合意の有無のみを理由に請求を棄却したことは、釈明権の行使を怠り審理を尽くさなかったものと評価される。
結論
本件土地の現況が宅地であるならば、農地法上の届出なしに売買契約は有効となる可能性がある。原判決には釈明権不行使または審理不尽の違法があるため、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
農地法上の制限がかかる土地の譲渡において、契約後の状況変化(市街化区域への編入・宅地化)によって制限が不要となる例外的な場面を示す。司法試験においては、農地法の許可・届出がなされないまま登記請求等を行う事案で、現況が農地性を喪失している場合の救済理論として活用できる。特に釈明権の行使(民訴法149条)との関連で実務上の重要性が高い。
事件番号: 昭和39(オ)1226 / 裁判年月日: 昭和41年6月30日 / 結論: その他
現況宅地である土地について農地法第三条の知事の許可を条件として所有権移転登記を請求する訴訟が提起された場合には、裁判所は、宅地としての売買による所有権移転登記の請求についてまで前記条件を付する趣旨か否かを釈明して判断するのが相当である。
事件番号: 昭和29(オ)554 / 裁判年月日: 昭和30年12月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地調整法施行当時において、農地の潰廃(転用)に制限はなく、許可を要することとなったのは昭和16年の臨時農地等管理令施行以降である。したがって、それ以前に宅地化した土地については、同管理令に基づく許可の有無は問題とならない。 第1 事案の概要:本件土地は昭和13年ないし14年頃に埋立工事が完了し、…
事件番号: 昭和38(オ)1044 / 裁判年月日: 昭和39年6月9日 / 結論: 棄却
農地につき知事の許可なくして為された売買契約でも、その後該農地が適法に宅地化されたときは、そのときから当然効力を生ずると解すべきである。
事件番号: 昭和34(オ)642 / 裁判年月日: 昭和35年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地法上の許可を停止条件とする農地の売買契約において、地目が畑であり実態が農地であると認められる場合には、その性質に基づき適法な事実認定がなされるべきである。 第1 事案の概要:被上告人らは、上告人から本件土地を北海道知事の許可を停止条件として買い受けた。本件土地の地目は「畑」であり、原審において…