幅員約一二メートルの南北に通じる国道と幅員七メートルの東西に通じる市道の交差する、信号機がなく、かつ、交通整理の行われていない交差点において、市道から交差点に先に進入していた自転車と国道から右交差点に進入した自動車が自動車の進路通行帯中央付近で衝突した場合に過失割合を自動車側六、自転車側四とした判断は、自動車側の過失割合を著しく低く定めたものであつて、裁量権の範囲を逸脱したものである。
過失相殺割合の判断が裁量権を逸脱して違法であるとされた事例
民法722条,道路交通法(昭和46年法律第98号による改正前のもの)35条1項
判旨
交通整理の行われていない交差点における過失相殺(民法722条2項)の判断にあたっては、道路交通法上の優先関係を十分に考慮すべきであり、先入車両の優先原則を看過した過失割合の認定は、裁量権の範囲を逸脱し違法となる。
問題の所在(論点)
交通整理の行われていない交差点での衝突事故において、道路交通法上の「先入車両優先」の規定が、不法行為法上の過失相殺の判断においてどの程度考慮されるべきか。
規範
不法行為に基づく損害賠償額を定める際の過失相殺において、交差点における事故の過失割合を判断するにあたっては、道路交通法の規定による交差点の通行方法(優先関係)を、他の事情とともに十分考慮しなければならない。
重要事実
幅員12メートルの国道(加害者側)と幅員7メートルの市道(被害者側)が交差する、信号機のない交差点において、時速50kmで漫然運転をしていた加害車両と、無灯火で進入した被害自転車が衝突した。原審は、被害者に広路優先車(国道)の進行を妨げない義務違反があること等を重視し、加害者6:被害者4の過失割合としたが、事案の状況から被害自転車が先に交差点に進入した「先入車両」であることがうかがわれた。
あてはめ
本件事故当時、道路交通法(旧35条1項)は交通整理のない交差点における「先入車両の優先」を定めていた。本件では被害自転車が先入車両であることがうかがえる状況にあり、広路優先の法理だけでなく、この先入優先の原則も考慮に入れるべきである。原審が定めた加害者の過失割合(6割)は、この先入車両優先の原則を十分に考慮しておらず、著しく低きに失するものであって、裁量権の範囲を逸脱していると解される。
結論
原審の過失割合の判断には、道路交通法上の優先関係を軽視した違法があり、再度審理を尽くさせるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
交通事故の過失相殺において、当時の道路交通法が定める優先関係(優先道路、左方優先、先入優先等)は、裁判所の裁量を拘束する不可欠な判断要素となる。答案上は、単なる注意義務違反の比較に留まらず、個別具体的な道交法上の優先関係を規範の適用段階で必ず指摘すべきことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和42(オ)1019 / 裁判年月日: 昭和43年10月17日 / 結論: 棄却
公園の中の道路の左側に停車していた自動三輪車が右停車位置附近において右道路と鋭角に交差する道路に右折しながら進入せんとして、右折の合図をしながら発進し、ゆつくりと道路中央線附近に右折進行した場合に、後続の原動機付自転車がその右側を中央線を越えて追い抜こうとして右自動三輪車前部に衝突した等原判示の事実関係のもとにおいては…