加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車とが衝突した場合において、自転車に過失があるかどうかを判断するにつき、自転車が道路上で方向を転ずるのを自動車の運転手が三・二メートル手前で発見したと認定しながら、判示事情のもとで自転車が自動車の直前においてUターンしたと認むべきではないと認定し、自転車には過失はないと判断したのは、審理不尽・理由不備・理由そごの違法がある。
加害自動車と同一方向に進行していた被害自転車の衝突において自転車に過失があるかどうかを判断するにつき審理不尽・理由不備・理由そごの違法があるとされた事例
民法709条,民法722条2項,自動車損害賠償保障法3条,民訴法394条,民訴法395条1項6号
判旨
交通事故の損害賠償請求において、被害者が車両の至近距離で突如Uターンを開始した事実は過失相殺の成否を左右する重要事実であり、証拠に基づかずこれを否定した原審には審理不尽等の違法がある。
問題の所在(論点)
交通事故における被害者の過失(Uターンの態様)の認定において、証拠に基づかない事実認定や理由の矛盾(理由そご)がある場合に、過失相殺の判断に影響を及ぼす違法となるか。
規範
過失相殺(民法722条2項)の判断においては、被害者の不注意の有無及びその程度を認定するために必要な間接事実を、証拠に基づき合理的に認定しなければならない。特に、加害車両の直前における不適切な進路変更の有無は、過失の存否及び割合を決定する重要な判断要素となるため、証拠上の裏付けを欠く認定や、矛盾する事実認定を行うことは許されない。
重要事実
上告人(加害者)が運転する自動車と、道路西端を同方向に進行していた被上告人(被害者)の自転車が衝突した。原審は、上告人が「3.2メートル手前」で被上告人の方向転換を発見したと認定しつつ、他方で被上告人が「直前においてUターンをしたと認むべき証左はない」として、事実上過失相殺の判断に影響する被上告人の不適切な挙動を否定した。しかし、記録上「3.2メートル」という数値の根拠はなく、むしろ「約30メートル手前で突如Uターンを開始した」旨の証拠が存在していた。
あてはめ
原審が認定した「3.2メートル」という数値は、挙示された証拠のいずれにも現れず、客観的根拠を欠くものである(経験則違反・審理不尽)。また、至近距離での発見を認定しながら、直前のUターンを否定する判断は、論理的に整合しない(理由不備・理由そご)。本件現場は通行が激しく、衝突地点がセンターライン付近であることに照らせば、被上告人が突如Uターンを開始した事実は、過失相殺の成否及び程度を判断する上で極めて重要な要件に関する事実であるといえる。
結論
原審の事実認定には審理不尽、理由不備、理由そごの違法があり、過失相殺の判断に影響を及ぼす可能性がある。したがって、原判決を破棄し、更なる審理のため差し戻すべきである。
実務上の射程
裁判所が過失相殺を検討する際、証拠に基づかない被害者の挙動認定や、認定事実相互の矛盾がある場合に、民訴法上の上告理由(理由不備・理由そご)として構成する際の論拠となる。実務上は、事故状況(車間距離、地点)の精緻な認定が過失割合に直結することを示す。
事件番号: 昭和40(オ)31 / 裁判年月日: 昭和40年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】交差点で右折しようとする車両は、直進する対向車両との衝突を避けるため、一時停止または徐行すべき義務を負う。右折車が無理な追い越しや合図を欠いたまま進行し衝突を招いた場合、事故は専ら右折車の過失に帰せられる。 第1 事案の概要:軽二輪車を運転する上告人Aは、交差点進入時に短時間の右折合図をしたが、そ…