公園の中の道路の左側に停車していた自動三輪車が右停車位置附近において右道路と鋭角に交差する道路に右折しながら進入せんとして、右折の合図をしながら発進し、ゆつくりと道路中央線附近に右折進行した場合に、後続の原動機付自転車がその右側を中央線を越えて追い抜こうとして右自動三輪車前部に衝突した等原判示の事実関係のもとにおいては、右三輪車の運転手が発進後後方ないし右側の車輌の状況に注意を払わなかつたとしても、同人には右衝突事故について過失がないものというべきである。
自賠法第三条但書にいわゆる運転者の無過失を認めた事例
自動車損害賠償保障法3条但書
判旨
民事上の不法行為責任における過失の有無を判断する際、道路交通法の各規定を勘案することは適法であり、事故現場が同法の規定する交差点に該当するか等の形式的基準にかかわらず、事故当時の客観的事情に基づいて判断すべきである。
問題の所在(論点)
不法行為法上の過失の有無を判断する際、行政法規である道路交通法の規定をどのように参酌すべきか。また、事故現場が同法上の交差点に該当するか等の形式的要件が過失の認定に直結するか。
規範
民事上の過失の有無を判断するにあたっては、道路交通法が道路における危険防止や交通の安全・円滑を目的とするものであることに鑑み、同法の各規定を勘案して判断の基準とすることができる。また、過失の有無は、特定の場所が同法上の概念(交差点等)に該当するかという形式的区別のみによるのではなく、事故現場の状況等の客観的事情を総合して判断されるべきである。
重要事実
上告人と被上告人B(自動三輪車を運転)との間で交通事故が発生した。原審は、本件事故が上告人の過失によって発生し、被上告人らに過失はないと判断した。これに対し上告人は、事故現場が道路交通法上の「交差点」に該当するか否かや、被上告人の駐停車が法規に違反しているか否か等について判断が示されていないとして、原判決の法令解釈の誤りや違法を主張して上告した。
あてはめ
道路交通法は交通の安全を目的とするものであるから、民事上の過失判断においてその規定を勘案することは正当である。本件において、被上告人の過失の有無は、現場が「交差点」にあたるかといった形式的判断に拘泥されるべきではなく、現場の状況など事故当時の客観的事情から判断されるべきものである。本件事故は被上告人の駐停車によって生じたものではないため、その違法性を判断する必要もなく、上告人の過失のみを認めた原審の判断に違法はない。
結論
民事上の過失判断において道路交通法の規定を参酌することは適法である。事故当時の客観的事情に基づき上告人のみの過失を認めた原判決は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
交通訴訟において、道路交通法違反の有無が民事上の過失を直ちに基礎付けるわけではないが、同法が安全確保を目的とする以上、過失認定の有力な考慮要素になることを示した。答案上は、不法行為の過失(注意義務違反)を論じる際、行政法規の基準を「客観的事情」の一部として取り込む論拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1223 / 裁判年月日: 昭和29年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法722条2項の過失相殺において、裁判所は被害者本人に過失がないと認められる場合には、同条を適用しないことができる。また、第三者作成の私文書の成立について、裁判所は相手方の認否を待たず、自由な心証によってその成立を認定し得る。 第1 事案の概要:本件は損害賠償請求事件であり、被害者Dその他の者に…