或る事実が民法第七一五条に該当すると主張して損害賠償を求める訴訟において、右事実上の主張に自動車損害賠償保障法第三条の要件事実の主張が含まれている場合においては、右事実が同条に該当すると判断して判決しても弁論主義に違反しない。
自動車損害賠償保障法第三条の主張がなされているとされた事例。
自動車損害賠償保障法3条,民法715条,民訴法186条
判旨
当事者が民法715条の適用を求めて主張した事実の中に、自動車損害賠償保障法3条の要件事実が含まれている場合、裁判所が同法を適用して裁判することは弁論主義に違反しない。
問題の所在(論点)
当事者が民法715条の適用を主張している場合において、裁判所が自賠法3条を適用して判決することは、当事者の主張していない事実を基礎とするものとして弁論主義に違反するか。自賠法3条の「運行供用者性」等の要件事実が、民法715条の主張に含まれていると言えるかが問題となる。
規範
弁論主義の下では、裁判所は当事者の主張しない事実を判決の基礎にできないが、特定の法条の適用を基礎づける主要事実が、他の法条に基づく主張の中に実質的に含まれているのであれば、裁判所が当該事実に法的評価を加え、異なる法条を適用することは許容される。
重要事実
上告人A1(土建業者)に雇われた運転手A2が、A1所有の貨物自動車を運転中に事故を発生させた。被上告人(被害者)らは、これらの事実を主張して民法715条に基づく損害賠償を請求したが、自動車損害賠償保障法(自賠法)3条の適用については明示的に主張していなかった。原審は、主張された事実に基づき自賠法3条の責任を認めたため、上告人が弁論主義違反を理由に上告した。
あてはめ
被上告人らは、A1が貨物自動車を所有し、A2を雇用して業務に従事させていたこと、及びA2がその運転中に事故を起こしたことを主張している。これらの事実は、民法715条の要件(使用関係・事業執行性)を構成するものであるが、同時に、自賠法3条の要件事実である「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)であること、及び「自動車の運行により」事故が発生したことをも実質的に含むものである。したがって、裁判所がこれらの認定事実に対し自賠法3条を適用することは、当事者が主張した事実の範囲内での法的判断の変更に過ぎず、主張されていない事実を認定したことにはならない。
結論
原審が自賠法3条を適用して判決したことは弁論主義に違反しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
民法715条と自賠法3条のように、要件事実が重なり合う関係にある場合、一方の主張があれば他方の適用に必要な主要事実の主張もなされたと構成できる。答案上は、請求原因の法的構成が異なっても、基礎となる事実(攻撃防御の対象)に実質的な差異がなければ、釈明権の行使等のプロセスを経て、裁判所は適切な法適用を行うべきであるとの論証に活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)540 / 裁判年月日: 昭和35年4月15日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が明らかに争っている事実を、裁判所が証拠に基づかず擬制自白が成立したものとして認定することは、事実認定の法則に反し違法である。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、上告人(被告)らが陸奥湾内で水底電線を引揚げたことにより損害を受けたとして損害賠償を請求した。被上告人は、引揚屯数約104トン…