化粧品の製造販売を業とする被上告人はかねて化粧品の販売を業とする上告人より注文を受け同人の指示にしたがつて化粧品を製造して供給し、右化粧品は上告人の販売網を通じて他に売却されていたところ、昭和四一年二月二四日及び同年四月四日被上告人は上告人よりマニキュア、除光液及びアイライン等計四六〇〇ダースの注文を受け製造にとりかかつたところ、上告人は同年四月、正当の理由がないのに右化粧品の納入中止を申し入れ、その受領を拒否したのであり、右目的物は注文により製造され、注文者の販売網によつて売却される大量の化粧品であるから商法五二四条の供託又は自動売却に適さないものというべく、かかる場合被上告人は上告人の目的物の受領拒否を理由に右契約を解除し、損害賠償を請求することができる、と解するを相当とする。
製造物供給契約の目的物が商法五二四条の供託又は自動売却に適しないとして注文者の受領拒否を理由とする受注者からの契約解除及び損害賠償請求が認められた事例
商法524条,民法541条
判旨
商人間における製造物供給契約の目的物が、その性質上、商法524条1項に基づく供託や同条2項に基づく自助売却に適しない場合には、売主はこれらの手続を経ることなく、買主の受領遅滞を理由として損害賠償を請求することができる。
問題の所在(論点)
商人間における売買において、売主が商法524条に定める供託または自助売却の手続を経ることなく、買主の受領遅滞を理由に損害賠償を請求することができるか。特に目的物がこれらの処分に適さない場合の処理が問題となる。
規範
商法524条は、買主が目的物の受領を拒んだ際の売主の権利として供託・自助売却権を定めているが、同条の趣旨は売主を目的物保管の負担から解放することにある。したがって、目的物がその性質上、供託や自助売却に適さない特別の事情がある場合には、これらを欠いたとしても、債務不履行(受領遅滞)に基づく損害賠償請求の行使は妨げられない。
重要事実
上告人(買主)と被上告人(売主・受注者)との間で製造物供給契約が締結された。被上告人は目的物を製造し提供したが、上告人がその受領を拒んだため、被上告人は目的物の供託や自助売却を行うことなく、上告人に対して受領遅滞を理由とする損害賠償を請求した。なお、本件の目的物が具体的にどのような製品であったかについては「判決文からは不明」であるが、原審において供託・自助売却に適さないものと認定された。
あてはめ
本件製造物供給契約の目的物は、原審の認定によれば、商法524条1項の供託または同条2項の自助売却に適しない性質を有していた。このような場合、売主に対してあえて実行困難な供託・売却手続を要求することは同条の趣旨に反する。よって、これらの手続を経ていないことは損害賠償請求を拒む理由にはならず、被上告人の請求は正当であると評価される。
結論
本件製造物供給契約の目的物が供託や自助売却に適しない以上、それらの手続を履践していなくとも、被上告人の損害賠償請求は認められる。
実務上の射程
商法524条の「供託・自助売却」が損害賠償請求の前提要件(義務)であるかのような誤解を解く判例である。特に特殊仕様の機械やオーダーメイド製品など、市場性がなく転売(自助売却)が困難な目的物の場合には、同条の手続を経ずに直ちに受領遅滞に基づく損害賠償(保管費用や代金相当額等)を請求できる可能性を示すものとして実務上重要である。
事件番号: 昭和28(オ)1129 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の目的の範囲外の行為であるからといって、直ちに取引相手方の過失を推定すべきではなく、法人の役員による背任行為について相手方が悪意又は重過失でない限り、当該相手方に法人の目的等に照らした過失があるとはいえない。 第1 事案の概要:上告会社(法人)の訴外役員Dが、被上告人との間でダイヤ等の売買契約…
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衣料品の卸売業者と小売業者との間における周知性のある他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用した商品の売買契約は,当事者がそのような商品であることを互いに十分に認識しながら,あえてこれを消費者の購買のルートに乗せ,他人の真正な商品であると誤信させるなどして大量に販売して利益をあげようと企て,この目的を達成するために継…
事件番号: 平成16(受)519 / 裁判年月日: 平成18年4月14日 / 結論: 破棄自判
本訴及び反訴が係属中に,反訴原告が,反訴請求債権を自働債権とし,本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは,異なる意思表示をしない限り,反訴を,反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分を反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更するものとして,許される。