民法五四〇条二項の規定は、契約解除の意思表示をした者が相手方の同意を得てした右意思表示の撤回の効力を妨げるものではない。
相手方の同意を得てした解除の意思表示の撤回と民法五四〇条二項
民法540条2項
判旨
契約の解除権を行使した者であっても、相手方の同意を得た場合には、民法540条2項にかかわらず、解除の意思表示を有効に撤回することができる。
問題の所在(論点)
解除の意思表示は撤回することができないと定める民法540条2項の規定がある中で、相手方の承諾がある場合に解除の意思表示を撤回し、契約関係を維持することができるか(解除の意思表示の撤回の可否)。
規範
民法540条2項は、解除の意思表示をした者が、相手方の同意を得て当該意思表示を撤回することを妨げるものではない。したがって、解除の意思表示がなされた後であっても、相手方の承諾(同意)があれば、その撤回は有効である。
重要事実
上告人は、被上告人(証券会社)との売買一任勘定取引について、昭和37年3月14日に代理人を介して手仕舞(解約)を申し入れた。しかし、その2日後の同月16日、被上告人の支店長代理の勧告に従って取引を継続することに合意し、実際に昭和38年7月29日まで取引を継続した。その後、上告人は当該手仕舞の申入れにより契約は終了していたとして、撤回の効力を争った。
あてはめ
上告人は一旦「手仕舞」を申し入れており、これが解除の意思表示に該当するとしても、その後に被上告人側の勧告を受け入れて取引継続を承諾している。この事実は、解除の意思表示をした者が、相手方である被上告人の承諾を得て、当該意思表示を撤回したものと評価できる。また、現実にその後1年以上にわたって取引が継続されていることから、当事者間に契約継続の合意(撤回の合意)があったことは明らかである。
結論
相手方の同意がある以上、解除の意思表示の撤回は有効であり、本件取引は終了せず継続していたものと解される。
実務上の射程
民法540条2項の「撤回不可」の原則は、相手方の保護を目的とするものである。したがって、相手方が同意している場合には同項の適用はなく、当事者間の合意による契約関係の復活・維持を認めるのが判例の立場である。答案上は、解除後の事情変更による合意解約の取消しや、解除の撤回の効力が問題となる場面で、同条項の反対解釈として活用すべき規範である。
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