第三者の売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記が存在する建物の競落人は、後日右売買予約の完結により仮登記の本登記がなされ、目的物件の所有権を喪失した場合には、民法五六八条、五六七条の類推適用により当該建物の売買(競落)を解除することができるものと解するのが相当である。
仮登記担保権の実行により目的物の所有権を喪失した競落人と民法五六七条の類推適用
民法556条,民法567条,民法568条,不動産登記法2条,不動産登記法7条2項
判旨
抵当権実行による競落人が、債権担保目的の仮登記に基づく本登記経由により所有権を喪失した場合、民法567条を類推適用し、同法568条に基づき競落の解除を認め、代金の返還を請求できる。
問題の所在(論点)
強制競売の目的物について担保目的の仮登記が存在し、競落後に本登記がなされて競落人が所有権を喪失した場合、民法567条・568条を類推適用して契約の解除および代金返還請求ができるか。
規範
第三者の売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記がなされた不動産について、抵当権実行による競落人が代金完済後に仮登記に基づく本登記がなされたことで所有権を喪失した場合、当該仮登記が債権担保目的であるときは、民法567条を類推適用し、同法568条に従って競落人は売買(競落)の解除権を取得する。
重要事実
本件建物の競売手続において、被上告人が競落代金を完済して所有権を取得した。しかし、本件建物には訴外Dによる売買予約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記が存在していた。この仮登記は債権担保目的で締結されたものであり、Dが予約完結権を行使して本登記を経由したため、被上告人は所有権を喪失した。被上告人は競落の解除を主張し、競落代金等の返還を求めた。
あてはめ
本件の仮登記は、消費貸借上の債権担保を目的として締結された売買予約に基づくものである。このような担保目的の仮登記は、抵当権と同様に、実行(本登記)によって後順位の所有権取得者に不測の損害を与える性質を有する。競落人が仮登記担保権者からの訴訟において清算金の支払請求(引換給付の主張)をしなかったとしても、所有権喪失という結果は変わらず、解除権の行使を妨げる理由にはならない。したがって、民法567条の類推適用により解除権の発生が認められる。
結論
被上告人は、民法567条の類推適用および568条に基づき、本件競落の解除権を取得する。被上告人が解除の意思表示をした以上、上告人に対し競落代金等の出捐額の支払を請求できる。
実務上の射程
抵当権等の行使による制限がある場合の売主の担保責任(567条)を、担保目的の仮登記がある場合の競売(568条)に転用する重要判例である。答案上は、仮登記が「担保目的」であることを指摘した上で、567条の直接適用ができない場面での類推適用の根拠として活用する。また、仮登記担保法制定前の事案であるが、現在の法理でも同様の結論が維持される。
事件番号: 昭和62(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 破棄自判
債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。