債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合には、両者の優劣は、一般債権者の申立てによる差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決すべきである。
債権について一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位権に基づく差押えが競合した場合における両者の優劣の判断基準
民法177条,民法304条,民法372条,民事執行法145条
判旨
一般債権者の差押えと抵当権者の物上代位に基づく差押えが競合した場合、両者の優劣は、一般債権者の差押命令の第三債務者への送達と抵当権設定登記の先後によって決せられる。
問題の所在(論点)
抵当権者が物上代位権(民法304条、372条)を行使して差し押さえた債権について、一般債権者による差押えが先行していた場合、両者の優劣はどの時点を基準に判断すべきか。特に、民法304条1項但書の「払渡し又は引渡し」前の差押えの要否との関係で、登記の有無が優劣に影響するかが問題となる。
規範
一般債権者による差押えの処分禁止効は差押命令の第三債務者への送達によって生じ、抵当権の対抗要件は抵当権設定登記である。したがって、両者の優劣は、一般債権者の差押命令が第三債務者に送達された時点と、抵当権の設定登記がなされた時点の先後によって決定される。
重要事実
抵当不動産の賃料債権に対し、一般債権者が差押えを行い、その差押命令が第三債務者に送達された。一方で、抵当権者も当該賃料債権に対して物上代位権に基づき差押えを申し立て、両者が競合した。なお、抵当権の設定登記がなされた時期と差押命令の送達時期の具体的な前後関係については、上告理由の判断において送達が登記より先であった場合を前提としている(具体的な日付等の詳細は判決文からは不明)。
あてはめ
本件において、一般債権者の差押命令の第三債務者への送達が、抵当権者の抵当権設定登記よりも先になされたのであれば、抵当権の対抗要件が具備される前に一般債権者が差押えによる処分禁止効を発生させたことになる。この場合、抵当権者は、後から物上代位権を行使したとしても、先行する一般債権者に対して優先権を主張することはできず、配当を受けることはできないと評価される。
結論
一般債権者の差押命令の送達が抵当権設定登記より先であれば、抵当権者は優先して配当を受けることができない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
抵当権と物上代位の関係において、差押えの先後ではなく「登記の先後」で決するという基準を示した極めて重要な判例である。民法304条の差押えの趣旨を「第三債務者の二重弁済防止」と解しつつ、一般債権者との優劣については公示(登記)を重視する。答案では、物上代位の可否が問われる場面で、一般債権者や債権譲受人が登場した場合の優劣判断の基準として活用する。
事件番号: 昭和60(オ)1270 / 裁判年月日: 平成元年10月27日 / 結論: 棄却
抵当不動産が賃貸された場合においては、抵当権者は、民法三七二条、三〇四条の規定の趣旨に従い、賃借人が供託した賃料の還付請求権についても抵当権を行使することができる。