有限会社の取締役が、その相互間において新取締役選任の決議の手続に入るまでに辞任すべき旨を申し合わせても、後にその申合せを撤回して辞任の手続をとらないことは許される。
有限会社の取締役相互間における辞任の申合せと撤回
有限会社法32条,商法254条3項,民法651条,民法540条2項
判旨
取締役らが後任選任の決議までに辞任する旨を相互に申し合わせたとしても、それは単なる申合せに過ぎず、実際に辞任の手続をとらない限り、辞任の効力は生じない。
問題の所在(論点)
取締役らが後任選任のための総会招集に同意し、その場において辞任する旨を相互に申し合わせていた場合、実際の辞任届の提出がなくても辞任の効力が生じ、後任選任決議は有効となるか。
規範
取締役の辞任は、会社に対する一方的な意思表示によって効力を生ずる。取締役相互間において「特定の時期(新任者の選任時等)までに辞任する」旨の合意(申合せ)がなされたとしても、それは内部的な約束に留まり、当該取締役が後に翻意して辞任の手続(意思表示)を拒んだ場合には、辞任の効力は発生しない。また、取締役の改選を目的とする社員総会の招集決定自体が、直ちに「改選決議の成立を条件とする辞任の意思表示」を包含するものとは解されない。
重要事実
有限会社Aの取締役4名は、取締役の改選を目的とする臨時社員総会の招集を全員一致で決定した。しかし、当日開催された総会において、新取締役選任の議決に入る直前に、当該4名は翻意して辞任届(辞表)を提出しなかった。その後、4名が辞任したことを前提として新取締役選任の決議が行われたため、当該決議の効力が争われた。
事件番号: 昭和52(オ)833 / 裁判年月日: 昭和53年4月14日 / 結論: 棄却
有限会社の社員総会において、その社員である特定の者を取締役に選任すべき決議をする場合に、その特定の者は、右決議につき特別の利害関係を有する者にあたらない。
あてはめ
本件において、取締役4名が取締役改選目的の総会招集を決定したことは、直ちに条件付辞任の意思表示をしたと解するには不十分である。これはむしろ、取締役相互間において「新取締役選任の手続に入るまでに辞任すべき」という方針を申し合わせたに過ぎない。取締役はこのような内部的な申合せを後に撤回することが許されており、実際に辞任の手続(会社に対する辞任の意思表示)を行っていない以上、役員としての地位を失わない。したがって、これら4名が辞任したことを前提として行われた新取締役選任決議は、前提事実を欠く不当なものであると評価される。
結論
取締役らが辞任の手続をとらない以上、辞任したことにはならず、その辞任を前提とした新取締役選任決議は無効である。
実務上の射程
会社法上の役員の地位の変動については、合意の有無よりも具体的な意思表示の有無を重視する。答案上は、取締役の辞任時期や、辞任を前提とする後任選任決議の効力が争点となる場面で、内部的な合意だけでは不十分であり、確定的な辞任の意思表示が必要であることを論証するために用いる。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。
事件番号: 昭和35(オ)454 / 裁判年月日: 昭和36年12月21日 / 結論: 棄却
一 株主総会において株主が二派に分かれ、同一議案について二個の決議をなし、その一個がかしのある決議である場合、かしのない決議が後に成立したものであつても、これを適法のものとすることは差支ない。 二 株式の譲受人の氏名が株主名簿に記載されなくても、会社はこれを株主として取り扱うことを妨げない。
事件番号: 昭和45(オ)695 / 裁判年月日: 昭和48年8月7日 / 結論: 棄却
有限会社の社員総会における議長の選任につき、定款に特別の定めのないかぎり、出席社員の互選によつて議長が選任される。
事件番号: 昭和40(オ)821 / 裁判年月日: 昭和42年7月25日 / 結論: 棄却
一 株主総会の決議は、定款に別段の定めがないかぎり、その議案に対する賛成の議決権数が決議に必要な数に達したことが明白になつた時に成立するものと解すべきであつてかならずしも挙手、起立、投票などの採決の手続をとることを要しない。 二 営業の譲渡に関する株主総会の決議について、譲渡会社の株主が譲受会社の代表取締役であつても、…