供託者が、債務者の代理人としてする意思で、本人のためにすることを表示することなく、債権者を被供託者として弁済供託をした場合、被供託者において本人のためにされたものであることを知り又は知りうべきであつたときは、右弁済供託は債務者より債権者に対するものとしての効力を有する。
本人のためにすることを示さないでした代理人による弁済供託と民法一〇〇条但書の適用
民法100条,民法494条,民法495条
判旨
弁済供託において、供託者が本人の代理人としてする意思がありながら顕名をしなかった場合でも、被供託者が本人のためにされたことを知り、または知り得たときは、本人による弁済供託としての効力を有する。
問題の所在(論点)
代理人が本人のためにすることを示さずに(非顕名で)行った弁済供託について、民法100条但書と同様の理理により、本人による有効な弁済供託と認められるか。その判断基準が問題となる。
規範
弁済供託は供託者と供託官との間の寄託契約の性質を有するが、その私法上の主たる効果は債務の消滅であり、効力の有無は被供託者との関係で決せられる。したがって、代理人が本人のためにすることを示さない(非顕名)で行った供託であっても、民法100条但書の類推適用により、被供託者が本人のためにされたものであることを知り、または知り得べきであったときは、本人に対する弁済供託としての効力を生ずる。
重要事実
土地賃借人Dの代理人である被上告人Bは、Dの賃料を支払うために、自己の名で(顕名をせずに)弁済供託を行った。これに対し、被供託者である賃貸人(上告人)は、当該供託がDの代理人としてDの賃料支払のためにされたものであるという事情を当然に知り得る状況にあった。
事件番号: 昭和35(オ)347 / 裁判年月日: 昭和38年7月25日 / 結論: 棄却
代理権消滅の事実を相手方の代理人が知つていた場合には、民法第一一二条による表見代理は成立しない。
あてはめ
本件において、被上告人Bは土地賃借人である亡父Dの代理人として賃料支払の意思を持って供託を行っている。また、被供託者である上告人は、BがDの代理人として供託したという事情を「当然知り得たもの」と認められる。この場合、顕名がなくても相手方保護の必要性は乏しく、実質的には本人Dによる弁済供託が行われたのと同視できる。したがって、当該供託はDの上告人に対する賃料支払としての効力を有すると評価される。
結論
非顕名の供託であっても、相手方が悪意または有過失であれば、本人による有効な弁済供託となる。本件各供託は、亡Dの上告人に対する賃料支払として有効である。
実務上の射程
顕名のない代理行為の効力に関する民法100条但書の法理を、弁済供託の場面においても適用した判例である。答案上は、供託の法的性質(寄託契約)に触れつつ、その私法上の効果である債務消滅の側面を強調し、相手方(被供託者)の認識如何で有効性を判断する枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和46(オ)773 / 裁判年月日: 昭和47年7月6日 / 結論: 棄却
家庭裁判所が家事審判規則一〇六条一項により選任する相続財産管理人は、相続財産に関して提起された訴につき、相続人の法定代理人として、家庭裁判所の許可なくして応訴することができるものと解すべきである。
事件番号: 昭和30(オ)447 / 裁判年月日: 昭和31年12月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】他人名義を用いて契約を締結する際、相手方が名義人本人のみに契約を限定する意思がなく、指定された者であれば誰でもよいという意思を持っていた場合には、実際の行為者または指定された者を契約の当事者として確定すべきである。 第1 事案の概要:不動産取引において、Dが被上告人に本件宅地を買い受けさせることと…
事件番号: 昭和43(オ)1309 / 裁判年月日: 昭和45年3月17日 / 結論: 棄却
建物収去土地明渡の判決においては、土地の地積および建物の床面積を、計量法所定の計量単位によらないで、尺貫法による計量単位によつて表示しても違法ではない。
事件番号: 昭和50(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和51年3月15日 / 結論: 棄却
訴訟代理権を授与された者が本人の死亡したのちその者を原告と表示して提起した訴は、死亡した本人の相続人のための訴として適法である。