家庭裁判所が家事審判規則一〇六条一項により選任する相続財産管理人は、相続財産に関して提起された訴につき、相続人の法定代理人として、家庭裁判所の許可なくして応訴することができるものと解すべきである。
家事審判規則一〇六条一項の相続財産管理人の応訴権限
民法28条,民法103条,民法907条2項,家事審判規則106条1項
判旨
遺産分割の申立に伴い選任された相続財産管理人は、民法28条を類推適用し、家庭裁判所の許可なく民法103条所定の権限を越えない保存行為等を行うことができる。相続人に対して提起された相続財産に関する訴訟への応訴は保存行為に当たり、管理人は相続人の法定代理人として許可なく応訴することが可能である。
問題の所在(論点)
遺産分割手続中に選任された相続財産管理人が、家庭裁判所の許可を得ることなく、相続人に対する相続財産に関する訴訟に応訴することができるか。民法28条の類推適用の可否および応訴の法的性質(保存行為該当性)が問題となる。
規範
遺産分割の申立に伴い選任された相続財産管理人(家事審判規則106条1項)は、制度の趣旨に鑑み、不在者の財産管理人に関する民法28条を類推適用すべきである。したがって、管理人は家庭裁判所の許可なく民法103条所定の範囲内の行為をすることができ、特に相続財産に関する訴訟への応訴については、保存行為として、相続人の法定代理人の資格において裁判所の許可なく行うことができる。
重要事実
被相続人Dの遺産分割申立に伴い、大阪家庭裁判所はEを相続財産管理人に選任した。その後、被上告人が相続人である上告人らに対し、遺産に属する建物の収去および敷地の明渡しを求めて提訴した。これに対し、管理人Eは相続人らの法定代理人として応訴したが、その際、家庭裁判所の許可を得ていなかったため、その応訴の適法性が争われた。
事件番号: 昭和46(オ)474 / 裁判年月日: 昭和47年9月1日 / 結論: 破棄差戻
一、権限のある代理人は、上告審において、上告審および控訴審における無権代理人の訴訟行為を追認することができる。 二、家庭裁判所が選任した不在者財産管理人は、民法二八条所定の家庭裁判所の許可を得ることなしに、不在者を被告とする建物収去土地明渡請求を認容した第一審判決に対し控訴を提起し、その控訴を不適法として却下した第二審…
あてはめ
本件管理人は、遺産分割の円滑な進行と財産保全のために選任された者であり、不在者の管理人と同様の地位にあるといえる。被上告人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟への応訴は、相続財産の現状を維持し、不当な権利侵害を防ぐための「保存行為」に該当する。したがって、管理人は民法103条1号に基づき、家庭裁判所の許可を要せず、相続人の法定代理人として適法に応訴することができると解される。
結論
管理人が家庭裁判所の許可なく相続人の法定代理人として応訴したことは正当であり、適法である。
実務上の射程
遺産分割事件における管理人の権限を明らかにしたものであり、訴訟手続における代理権の有無(訴訟能力・代理権の欠缺)を論じる際に参照すべき判例である。保存行為を超える行為(和解や放棄など)には別途裁判所の許可が必要となる点に注意を要する。
事件番号: 昭和27(オ)604 / 裁判年月日: 昭和28年10月9日 / 結論: 棄却
商人の借地権の放棄に関する契約は、たとえ右借地権がその営業所の敷地に関する場合であつても、商法第五〇九条にいわゆる「其営業ノ部類ニ属スル契約」とはいえない。
事件番号: 昭和46(オ)279 / 裁判年月日: 昭和50年11月20日 / 結論: 棄却
供託者が、債務者の代理人としてする意思で、本人のためにすることを表示することなく、債権者を被供託者として弁済供託をした場合、被供託者において本人のためにされたものであることを知り又は知りうべきであつたときは、右弁済供託は債務者より債権者に対するものとしての効力を有する。
事件番号: 昭和26(オ)719 / 裁判年月日: 昭和28年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物収去土地明渡請求が権利の濫用に該当するか否かは、個別の事案における事実関係に基づいて判断される。本件のような事実関係の下では、当該請求が民法1条3項にいう権利の濫用に当たらないことは明白である。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人による本件建物の収去及び土地の明渡請求について争い、その請求が…
事件番号: 昭和39(オ)1161 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
右の場合には、いわゆる固有必要的共同訴訟ではない。