一、権限のある代理人は、上告審において、上告審および控訴審における無権代理人の訴訟行為を追認することができる。 二、家庭裁判所が選任した不在者財産管理人は、民法二八条所定の家庭裁判所の許可を得ることなしに、不在者を被告とする建物収去土地明渡請求を認容した第一審判決に対し控訴を提起し、その控訴を不適法として却下した第二審判決に対し上告を提起する権限を有する。
一、上告審と無権代理人の訴訟行為の追認 二、家庭裁判所が選任した不在者財産管理人の上訴権限
民訴法50条,民訴法54条,民訴法87条,民訴法395条2項,民法28条,民法103条
判旨
不在者財産管理人が建物の収去・土地明渡を命じた第一審判決等に対し控訴や上告を行うことは民法103条の「保存行為」に当たり、家庭裁判所の許可なく行える。また、上告審において権限ある代理人が原審等の無権代理行為を追認することで、当該訴訟行為は遡及的に有効となる。
問題の所在(論点)
1. 不在者財産管理人が判決に対して上訴を提起する行為は、家庭裁判所の許可を要する「権限外の行為」か、それとも許可不要な「保存行為」か。 2. 上告審において、原審等における無権代理人の訴訟行為を追認することは可能か。
規範
1. 不在者財産管理人が、不在者に対して建物収去土地明渡等を命ずる判決に対し控訴・上告を提起し、またはそのための訴訟代理人を選任することは、財産の現状を維持する行為として民法103条1号の「保存行為」に該当する。したがって、民法28条所定の家庭裁判所の許可を要しない。 2. 無権代理人による訴訟行為であっても、上告審において権限ある代理人が追認したときは、民事訴訟法の規定(現34条2項、59条等)および再審制限の趣旨(現338条2項等)に鑑み、行為時に遡って効力を生ずる。追認の時期に制限はない。
重要事実
事件番号: 昭和46(オ)773 / 裁判年月日: 昭和47年7月6日 / 結論: 棄却
家庭裁判所が家事審判規則一〇六条一項により選任する相続財産管理人は、相続財産に関して提起された訴につき、相続人の法定代理人として、家庭裁判所の許可なくして応訴することができるものと解すべきである。
第一審で建物収去等を命じられた被告(上告人)に対し、妻Eが不在者財産管理人に選任された。Eは弁護士高島を代理人に選任して控訴したが、原審は高島の代理権を否定して控訴却下判決を下した。その後、Eは上告権限がないにもかかわらず上告人名義で上告を提起。しかし、上告審の口頭弁論期日において、Eから適法に選任された訴訟代理人高島が、これまでの無権代理による控訴・上告等の全訴訟行為を追認した。
あてはめ
1. 本件の控訴・上告およびそのための弁護士選任は、第一審判決等による財産喪失を防ぎ、不在者の財産の現状を維持する行為であるから、民法103条1号の「保存行為」に当たる。よって、家庭裁判所の許可なく適法に行い得る。 2. 訴訟代理人高島は、不在者財産管理人E(保存行為として代理権選任権限を有する)から選任されており、上告審において追認を行う権限を有する。この者が上告審で追認したことにより、当初は権限なくなされた控訴および上告は、行為時に遡って適法なものとなった。
結論
不在者財産管理人による上訴は保存行為として許可不要であり、また上告審での追認も有効である。したがって、代理権欠缺を理由とした控訴却下判決は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
不在者財産管理人の権限(民法103条・28条)と訴訟行為の追認(民訴法34条2項)の双方に関わる重要判例である。特に、敗訴判決に対する上訴を「現状維持」として保存行為に含めた点、および上告審での追認の遡及効を認めた点は、実務上の救済範囲を広げるものとして答案でも活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)604 / 裁判年月日: 昭和28年10月9日 / 結論: 棄却
商人の借地権の放棄に関する契約は、たとえ右借地権がその営業所の敷地に関する場合であつても、商法第五〇九条にいわゆる「其営業ノ部類ニ属スル契約」とはいえない。
事件番号: 昭和43(オ)1309 / 裁判年月日: 昭和45年3月17日 / 結論: 棄却
建物収去土地明渡の判決においては、土地の地積および建物の床面積を、計量法所定の計量単位によらないで、尺貫法による計量単位によつて表示しても違法ではない。
事件番号: 昭和33(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和36年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審における訴訟代理人の権限は、特段の事情がない限り、同一の事件について上訴審における代理権をも含むものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において被上告人を代理した弁護士に代理権がなかった旨を主張して上告した。しかし、記録上、当該弁護士に対しては第一審段階で訴訟代理委任状が…
事件番号: 昭和39(オ)754 / 裁判年月日: 昭和41年5月17日 / 結論: 棄却
臨時農地等管理令第七条の二及び第五条の各規定は取締規定であり、右各条所定の地方長官の許可は農地の賃貸借の有効要件ではない。