商人の借地権の放棄に関する契約は、たとえ右借地権がその営業所の敷地に関する場合であつても、商法第五〇九条にいわゆる「其営業ノ部類ニ属スル契約」とはいえない。
営業所の借地権の放棄契約と商法第五〇九条の適用の有無
商法509条
判旨
商法509条(現行商法509条1項)が定める商行為の代理権の非消滅は、代理人が商行為を行う権限を有する限り適用され、本人が商人でなくとも代理人が商人の場合には適用される。
問題の所在(論点)
商法509条(代理権の非消滅)の適用範囲について、本人が非商人である場合であっても、委任された事項が商行為に該当するときには同条の適用があるか。
規範
商法509条(現行509条1項)は、商行為の委任による代理権は、本人の死亡によって消滅しないと規定する。これは、商取引の継続性・迅速性を確保し、取引の安全を図る趣旨に基づく。したがって、委任された事項が商行為にあたる限り、本人の死亡によっても代理権は当然には消滅しない。
重要事実
訴外Dが被上告人(本人)らの代理人として、訴外Eに対し借地権を放棄する旨の約定をしたか否かが争点となった事案である。上告人は、代理権が消滅している旨を主張して争ったが、原審はDに放棄の事実がないことを認定するとともに、商法509条の適用に関する判断を示した(具体的な契約経緯や代理人の商属性等の詳細は判決文からは不明)。
事件番号: 昭和34(オ)288 / 裁判年月日: 昭和35年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地権の承継が認められない事実関係の下では、建物買取請求権を行使することはできない。また、特段の事情がない限り、土地明渡請求が権利濫用や信義則違反に当たるとはいえない。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本件土地上の建物を所有し、被上告人(原告)に対して建物買取請求権を主張した。しかし、原審におい…
あてはめ
最高裁は原審の判断を正当として引用するに留めているが、本条の趣旨が商取引の決済や事務処理の継続性にあることに鑑みれば、代理人が引き受けた事務が営業の部類に属する「商行為」である限り、本人の死亡という事由によって代理関係を終了させるべきではないと解される。本件において、原判決が認定した事実関係に基づけば、商法509条の適用を肯定した判断に違法はないとされる。
結論
商法509条に基づき、商行為にあたる代理権は本人の死亡によっても消滅しない。本件上告は棄却される。
実務上の射程
商法上の代理の特則(本人の死亡による代理権の不消滅)の適用場面を画定する際の基礎となる判例である。民法111条1項1号の例外として、委任事務の商行為性を基準に代理権の存続を主張する際に活用できる。
事件番号: 昭和50(オ)1167 / 裁判年月日: 昭和51年3月15日 / 結論: 棄却
訴訟代理権を授与された者が本人の死亡したのちその者を原告と表示して提起した訴は、死亡した本人の相続人のための訴として適法である。
事件番号: 昭和34(オ)1162 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の買受人が、当該不動産の賃貸借契約における賃貸人の地位を承継するためには、譲受人と譲渡人との間で賃貸人たる地位の譲受契約を締結することが必要であり、その代理権の授与も認められる必要がある。 第1 事案の概要:上告人(買受人)は、補助参加人(譲渡人)から本件土地を買い受けるに際し、訴外Dを代理…
事件番号: 昭和28(オ)334 / 裁判年月日: 昭和29年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物保護に関する法律1条(現借地借家法10条1項)による建物の登記は、土地賃借権の対抗力を認めるものであり、賃貸人の承諾(民法612条1項)を不要とする効果までは認められない。 第1 事案の概要:土地賃借人Dは、本件宅地の賃借権を上告人に対して譲渡したが、その際、賃貸人である被上告人の承諾を得てい…
事件番号: 昭和37(オ)294 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
借地権の無断譲渡を理由として土地賃貸借契約が解除されたのち地上建物を取得した第三者は、該建物の買取請求権を有しない。